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    ユキカ

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    ユキカ

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    リハビリの中身のない小ネタ

    エイプリルフール デートにでも行くか。テーブルの向かいから急に投げられた言葉に耳を疑った。デート? 誰が? 誰と? 頭に疑問符をいくつも浮かべて発言者を見れば、「俺とお前が、デート」と疑問を見透かした上で何を疑問に思っているんだとでも言いたげな返事が返ってきた。
    「デート」急に投げつけられた言葉を口の中で転がしながら、手で持っていたマグカップへと目を落とす。食後のコーヒーがゆらゆらと湯気を立てていた。
    「デート。行きたくないなら、まあ、いいけど」
     即答しない青年の態度に少し拗ねたような口振りで男が言う。無精髭の浮かぶ顎を手持無沙汰のように触る。土曜日の彼は平日と違ってどこか気怠げで、大人の渋さとかかっこよさをどこかに捨て置いてきた可愛さがあった。今の位置からでは見えないが、後頭部に寝癖がついていることも知っている。そういう隙が愛おしい。
    その拗ねたようにも見える態度から察するに、言わない方がよかったのか、迷惑だったかと、普段は口にしないデートのお誘いを彼なりに後悔しているのかもしれなかった。
     滅多にないお誘いだ。断る理由はない。
    「いや」行く。そう思って顔を上げたときに、不意に思いつくものがあった。吐き出しかけた言葉が途切れて思考がぐるっと巡る。今日の日付は何日だ。つけっぱなしにしているテレビを見ると、ちょうどエイプリルフールのニュースが流れている真っ最中だった。各企業が行っているエイプリルフールの企画を紹介している。ほっこりするようなものからおもしろおかしいものまで、各社工夫を凝らしていた。
     これか? 滅多にないお誘いの理由はこれなんだろうか?
     浮かれかけた気持ちがすうっと落ち着いて、冷静になろうとする。もしエイプリルフールのネタだとしたら本気にするのは馬鹿みたいだし恥ずかしい。だが、ネタでなかったとしたら誘いに乗らない方が馬鹿馬鹿しい。束の間悩み、いやしかし、彼はこういうネタをニュースとして面白がることはあっても自分から乗っかるようなことはしないタイプだから、たぶん、きっと、本気に違いないと判断することにした。
    「いや、何?」
     束の間悩んで答えを出すまでの間に、拗ねたような男の態度はどこか不機嫌なものとなっていた。あ、これはまずいと直感で悟る。「行く」と言ったところで「どうせ本当は行きたくないんだろ」とか言い出しかねない雰囲気だった。自分も相手もたまにこういう思考になることがある、お互い面倒な人間なのでよくわかる。不安でしょうがないのだ。
    「いや、行く」
     相手の目を見てきっぱりと言った。テーブルの向かいに座る男がわずかに目を見開いたような気がした。青年の返事に驚いたような、それでいて呆れたようにも見える表情だった。どう思ったのか、相手の感情を掴みあぐねる。
    「行くのか」
    「行く」
     もう一度はっきりと答えると、男は「そうか」と言って頭を掻いた。青年からわずかに目線を逸らす。その態度に「やはりネタだったのか」と不安がよぎったが、男が「よかった」と小さく呟いたものだから思わず目をしばたたいた。
    「え?」
     男は目線を逸らし、テレビの方を見る。「いや、断られてもエイプリルフールだからって言えるしなと思って言ってみたけど、まあやっぱり断られたら嫌だよなーと思って」
     拗ねたようにも聞こえるその口振りは照れ隠しなのだろう。男はいつの間にか芸能ニュースへと切り替わっていたテレビ番組をじっと見ている。
    「断るわけないだろ」
     ネタではないかと疑っていたことを隠して青年はきっぱりと答えた。冷静になった気持ちがまた浮かれる。お誘いは嬉しい。嬉しくないわけがない。浮かれた気持ちは急加速して、桜まだ咲いてたよなとか、この前言ってた店どこだったっけなんてデートの計画を考え始める。疑った自分を少しだけ恥じた。
     そうか、と男がまた小さく呟く。それからちらりとこちらを見る目と視線が合って、二人してへらっと笑った。
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    神功はリーチの長さを活かして槍を何度も突き出す。油断すれば蜂の巣にされそうなほど的確な急所狙いを薬師河は掌と膝から下を使って器用に受け止めた。神功は一際大きく後ろに肘を引くと小細工なく真っ直ぐに槍を突き出した。すると薬師河は槍の柄の部分を掌で滑らせて減速させ、足裏を前に突き出すようにして矛先を真っ向から受け止めた。
    〝ガギンッッ〟と鈍い金属音が響きわたって神功が眉を顰める。そのまま、ぐぐぐぐぐッと押し込もうとするが脚力と腕力の違いから押し切る事は出来ず。また、靭やかな優男の割には薬師河のウエイトは重く、ちょっとやそっとでは動く事は無かった。神功が薬師河の瞳から貫通した靴底の更に奥を見つめる。衝突で靴底は無惨にも穴が空いてしまったがその奥の足の指の付け根の辺りに硬い鉱石がプロテクターのようにはめられていた。
    1939