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    ayanashi_k

    @ayanashi_k

    主にCP系やワンクッション置きたい作品の載せ場所。
    細かい取り扱いや絵柄についてはX(旧twitter)もしくはツイフィ参照。
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    ayanashi_k

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    いずれカヴェアル‬になる2人の出会いの話。
    整体師アルハイゼンとデザイナーカーヴェの現パロド健全マッサージが読みたくて、リバビリ兼ねて書きました。※マッサージの描写は薄いです

    #カヴェアル
    Kavetham

    ようこそ、癒し処へ! ~初回~体が痛い。それはもうあちこち痛い。
    連日座りっぱなしの為か、腰から尻にかけてが悲鳴を上げているし太腿も脹脛もパンパンだ。それはもう靴下の跡がハッキリくっきり残るレベルに。
    製図台の無い部屋での作業が続き、必然的に前傾姿勢になっていたのもあって、首や肩周りも変な力が入ってしまって重苦しい。
    それが原因かは知らないが、関わっていたプロジェクトに目処がつき、ようやく仕事を終えて退勤してから鈍い頭痛がある。
    じわじわと侵食されるような痛みは、全身の不調を更に増幅するかのように、カーヴェの精神へもダメージを与えた。
    もうこれ以上はこの苦しみに耐えられそうにない。
    このまま家に帰ったところで、きっとこの疲労感はそのまま寝ても改善しないだろう事は、素人目にも分かりきっていた。
    ぼんやりする頭でなにか無いかと情報を漁っていると、不意に目に入った「リラクゼーション」の文字。
    広告バナーのそれがなんとなく気になって見てみると、マッサージ専門店の案内だった。
    疲労回復、血行促進などの文言と共に「ベテラン施術師が貴方を癒します」という文言と、メニュー表が並んでいる。
    確かにこれなら、感じている不調の原因を解消できるかもしれない。そう思って所在地を確認すると、随分と遠い土地名が記載されていた。
    残念ながら今からここに向かうには無理がある。
    しかし、この店以外にもいわゆるリラクゼーションの店と言うのは各地に存在するので、探せば現在地や自宅から近い場所にも似たような店があるかもしれない。
    思い立ったが吉日。カーヴェは早速マップアプリを立ち上げると、周辺のマッサージ店を調べ始めた。
    何店か候補が表示され、そのうちの1つが目に留まる。
    店の説明によると、スタッフは全員「整体師」か「あん摩マッサージ指圧師」の資格を持っていて、丁寧なカウンセリングと、患者の症状に合わせた施術が人気のようだ。
    レビューの評価も軒並み高く、新規の当日予約も可能とあったので、早速予約手続きを行った。


    「いらっしゃいませ」
    「あの、予約したカーヴェと言います」
    「お待ちしておりました。当店は初めてですよね」
    「はい」
    「では、こちらの問診票をお書きになってお待ちください」
    予約時刻の少し前に目的の店へ着いたカーヴェは、受付の女性に渡されたバインダーを片手に、待合室らしき場所の一角に置かれたソファに腰かける。
    バインダーには問診票と施術のコース一覧など何枚かの紙が挟まれていて、ざっと目を通してから記入が必要そうなものには書き込んで受付に提出した。
    それから程なくして名前を呼ばれ、奥の部屋へと案内された。
    病院に似た作りの廊下を進み、通された個室の中で椅子に腰掛けていると、数分で一人の男がやって来た。
    「失礼します」
    「あ、えっと」
    「そのままで結構です。本日担当をさせていただきます、アルハイゼンです」
    「カーヴェです。よろしくお願いします」
    アルハイゼンと名乗った男は、上背のある美丈夫で、表情は乏しいものの口調や纏う雰囲気は柔らかい、不思議な雰囲気の人だった。
    ケーシーの袖口から伸びる腕は逞しく、また胸元も筋肉の盛り上がりが見られる事から、相当鍛えているのだろう。
    これだけ己の筋肉を育てられる人なら、客の筋肉の正し方も分かるんだろうなと、勝手に期待が高まっていく。
    そんな担当施術師と机を挟んで対面すると、早速カウンセリングが始まった。
    「本日は全身マッサージをご希望との事ですが、不調の具体的な症状を教えて頂けますか?」
    「とにかく腰が痛くて、ふくらはぎとか…足全体がパンパンに張ってますね。あと、首周りが重苦しくて、振り返ったりすると痛みます」
    「ふむ……、頭痛はありますか?」
    「ええ。今ちょうど重たい石が詰められてるような感じの頭痛が…」
    「ズキズキとガンガン、痛みのタイプはどちらに近いか分かりますか?」
    「うーん、ズキズキ……ですかね」
    「成程、ありがとうございます」
    カーヴェの書いた問診票を元に、別の用紙へ何やら書き込みをしていた男は、少しの沈黙の後にカーヴェの方を見ると再度問いかける。
    「そちらのベッドに横になって頂いて、施術前に触診をしてもよろしいですか」
    「スーツのままでも大丈夫であれば」
    「かまいません。では、うつ伏せでベッドに寝転がってください」
    言われるままに席を立ち、靴を脱いで背後にあった診察用のベットに横になる。
    指示に従ってうつ伏せの姿勢をとり、顎の下に枕を入れて抱えるようなポーズになった。
    「苦しくは無いですか?」
    「大丈夫です」
    「では、触診を始めます」
    宣言と共に、アルハイゼンの指先が腰元に触れた。
    真上から軽く肉を押し込むようにされて、その都度触られて痛くないか、押されるとどうかと声がかかる。
    それに毎回答えて……という流れを何度も繰り返し、足首や肩を回されたりもして触診は終わった。
    「今触った感じですと、カーヴェさんの仰った通り腰周りと肩首の筋肉が凝ってますね。あと、普段右に上半身を捻ることが多いですよね。背中、左右差があります」
    「あ……L字の机を良く使っていて、右側に資料が置いてあるので、それを見たりするのによく体を捻ってるかも」
    「全体的に血流が少し滞っているみたいです。患部が冷えているので温熱療法とマッサージで血行促進しつつ、凝りの原因になっている身体の歪みを矯正してみましょう。それと、お嫌でなければツボを刺激するのも効果的ですが、どうされますか」
    「あ〜……おまかせで」
    「かしこまりました」
    施術内容が決まり、早速本格的な施術に移ると説明され、身を起こすとひと揃えの服を差し出された。どうやらスウェットのようだ。
    「スーツが汚れるのを防止するのと、施術の際の摩擦軽減などの為にこちらにお着替えください。着替えられている間に施術の準備をしてきます」
    「分かりました」
    準備の為に退室したアルハイゼンを見送って、カーヴェは服を着替えていく。スウェットはふわふわとしていて肌触りがよく、スーツからの開放感もあってほっと力が抜けるようだ。
    それから少しして、小さなワゴンを持ってアルハイゼンが戻ってきた。
    ワゴンにはタオルが積まれていて、天板には何やら湯気の出ている物体が乗っているのが見える。床屋でよく見る蒸しタオルの類いだろうか?
    そんな疑問を投げかける間もなく、また横になるように言われて、先程のようにうつ伏せで施術台に寝そべると、早速施術が始まった。
    「まずは肩を温めます。少し重みのある布袋を乗せますが、熱かったり異常を感じた場合にはすぐに教えてください」
    「わかりました」
    「失礼します」
    何度かパタパタと布を叩くような音がした後で、首から肩を覆うようにしてスウェットの上から袋状の何かが乗せられたのがわかった。
    乗せられた部分からじんわりと熱が広がって、心地良さに思わず溜め息がこぼれる。
    大きく深呼吸をすると、先程までは感じなかった何かの匂いが鼻に届いた。
    「なんだか、食べ物の匂いがするような…………」
    「肩に乗せた袋の中身に小豆やよもぎなど、食品として使われるものが含まれているので、その匂いですね」
    「なるほどぉ……」
    鼻に近い分程よく香ってくる匂いは、アロマのようにオシャレでは無いが、どこか懐かしいような気持ちにさせてくれる良い匂いだ。
    肩を温めている間、アルハイゼンの手は背中から腰にかけてをゆっくりと指圧し、時には手刀で切るように叩かれたり円を描くように擦られたりして、触る場所が移る度に彼からは確認の言葉がかけられる。
    「痛みはどうですか」「苦しくないですか」「もう少し強くしてもいいですか」
    細かな確認に最初こそハッキリと答えられていたカーヴェだったが、施術部位が臀部から太ももの方へと移る頃には、徐々に眠気が意識を飲み込み始めていた。
    温まった事で血行が良くなったのか、冷たかったはずの手足はポカポカとして、施術前には感じていた鈍い頭痛も今や気にならなくなっていた。
    グッと普段は使わない筋肉を刺激されたり、可動域の狭くなっていた腕を背面の方へ引っ張られたりと、それこそ目の覚めるような施術もあった。
    しかし、次第に体が慣れてくると、縮こまっていた筋肉が元に戻される感覚が心地よく、痛みよりも快感の方が勝った。
    何よりも眠気を誘ったのは男の低く柔らかな響きの声だ。元々あまり声が大きくないのか、囁くように紡がれる声は心地よく、店内BGMのオルゴールと合わさってまるで子守唄のようだった。
    「眠そうですね」
    「ぅ……いえ、その」
    「お仕事お疲れ様です。眠かったら寝てもいいですよ」
    「でも」
    「施術中に心地よくて眠る……というのは、よくある事ですから。その時には無理のない範囲で進めます」
    「……ありがとう、ございます」
    せっかく施術してもらっているのに、初回から眠るのは勿体ないし、失礼じゃないか。
    ……なんて思っていたのに、施術してくれている当人から許可を出されたりしたら、もう抗う事など出来そうにない。
    本当は、連日の寝不足や疲労で眠気はずっとあった。
    それに程よく体の緊張がほぐれてリラックスした事で、先程から気を抜けば意識を手放しそうなくらいには眠くなってきている。
    そこそこの力で刺激が与えられるし、流石に寝ないだろうなんて思っていた数分前までの自分はまるで分かっちゃいない。
    その刺激すら安眠への導きでしかないというのに。
    「終わりましたらお声掛けしますよ」
    「じゃあ……お願い……します…………」
    肩の上の温もりが遠ざかり、大きな手のひらが首周りをゆっくりと滑っていく。
    布越しに感じる体温が温かくて、時折与えられる指圧が気持ちよくて。
    気付けばカーヴェは、襲い来る眠気に逆らうことなく意識を手放したのだった。


    「……さん、か……ん」
    遠く、優しい声が聞こえる。
    「……ヴェさん、カーヴェ……」
    つい最近どこかで聞いたような、柔らかな男性の声が、己の名前を呼んだ気がした。
    「カーヴェさん、起きてください。施術が終わりました」
    かぁべさん、おきてください、せじゅつがおわりました。
    おきて……掟? いや、起きて? 僕は寝ているのか?
    せじゅつ……施術? 終わった?
    そうだ、僕は確かマッサージを受けに来ていて、それで……
    「……!!」
    「お疲れ様です、カーヴェさん」
    「あ……僕、本当に寝てた、のか」
    「えぇ、ぐっすりと。仰向けの姿勢にさせて頂いたのですが、その時も少し呻いただけで起きられませんでしたよ」
    「あ……本当だ、天井が見える」
    勢いよく開いた目に入ってきたのは絞られた証明のかすかな明かりと、覗き込んでくるアルハイゼンの顔、そして天井だった。
    うつ伏せだったはずなら、本来は今頃枕と施術台の白が広がっているべきだが、そうでは無いことから彼が姿勢を変えてくれたのは明白だ。
    力の抜けた人間の体は重い。いくらアルハイゼンが鍛えていたとしても、カーヴェの体をひっくり返すには相当な労力が必要だったに違いない。
    とりあえず促されるまま体を起こして、熟睡してしまったお詫びはどうしようかと頭を悩ませていると、横からカップを差し出された。
    中には薄黄色っぽい液体が満ちており、微かに湯気も見える。
    「これは?」
    「ハーブティーです。カモミールやレモングラスなどをブレンドした当店のオリジナルになります。施術後に皆さんへお出ししているので、良かったらどうぞ」
    「あ……そうなんですね。いただきます」
    受け取ったカップを傾けると、途端に口の中を優しくもスっとするような味と香りが抜けていく。
    ほんのりと甘く感じるのは、砂糖か蜂蜜でも混ぜているのだろうか。
    なんにせよ、水分補給にもなりスッキリとした気持ちにさせてくれるハーブティーは、カーヴェの口に良く合った。
    「美味しいです」
    「それは良かった。本日の施術は以上になりますが、どこか違和感があったりしませんか」
    「特には……全体的に軽くなった感じはありますが」
    「大丈夫そうですね。今日は全身の老廃物が排出されやすくなってますので、なるべく水分を取ってください。そうする事で翌日の揉み返しなどを予防できます。それでも痛みが出た場合は、本日中なら少し熱めのお湯に浸かって全身を温めて、明日起きてからの場合は痛む部分を冷湿布などで冷やすと緩和しますのでお試しください」
    詳しくはこちらを。そう言って手渡されたのは『マッサージを受けた方へ』と書かれた冊子だった。
    パラパラと捲ってみると、どうやら今しがた説明された揉み返しの予防や対処といった内容から、自分でもできる簡単なコリのほぐし方などが分かりやすく纏められていた。
    裏表紙には大きな文字で「筋肉は体を動かす大事な器官です。疲労は溜めないように心掛けましょう」と書かれている。
    分かってはいるが、なかなか不規則な生活を余儀なくされる時期があると、どうしても疲労は溜まりやすい。
    もちろん、だからこそこうした店があり、利用者がいる訳なのだが。
    「では、着替えが終わりましたら受付までお越しください。脱いだものは施術台に置いていてもらえれば結構です」
    「わかりました」
    一礼したアルハイゼンが部屋を去ってから、カーヴェはスウェットから元のスーツに着替えていく。
    心無しか、いつの間にかハンガーにかけられていたジャケットは、着てきた時よりシュッとしたように感じられた。
    着替えを終えて受付に向かうと、そこには受付時の女性ではなくアルハイゼンが立っていて、カーヴェの姿を捉えると「こちらへどうぞ」と会計へ促された。
    そういえばあまり金額を見ていなかったが、手持ちは大丈夫だろうか……。最悪カードで払えれば良いが……。
    今になって押し寄せた不安にギクシャクしつつ、受付に足を向けた。
    さっきぶりに対面したアルハイゼンは、慣れた手つきでレジスターを操作している。
    相も変わらず無表情の彼は、淡々と作業を進めるとカーヴェに向き直って口を開いた。
    「それでは、本日のお会計ですが全部で6000円になります。」
    「えぇと……」
    財布を開く。お札は……あった。
    奇跡的に入っていた万札で会計を済ませれば、お釣りとレシート、それから会員カードを渡された。
    どうやら会員カードはスタンプカードにもなっているようで、表には会員ナンバーらしき数字が、裏には10割の枠が印刷されていて、そのうち2つに肉球のスタンプが押されていた。
    「次回からはそちらのカードをお持ちください。スタンプは5つ貯まると割引や無料オプションが付けられます」
    「へぇ、いいですね……。また来ます」
    「またのご来店をお待ちしております」
    アルハイゼンに見送られて店を後にしたカーヴェは、足取りも軽く帰路に着く。
    あれだけ感じていた泥のような疲労は、眠ったのもあってかなり改善された。
    「あ、そういえば」
    今しがた渡されたポイントカードを再度よく見る。
    会計の時にはじっくり見なかったが、自分の名前以外にも誰かの名前のような単語が書いてあった気がしたのだ。
    「担当者……アルハイゼン。さっきの彼の名前だな」
    会員名の少し下、小さな欄だが黒字ではっきりと書かれていた。
    それがなんだか、また会える事の約束のようで、なんだかムズムズとした気持ちが込み上げる。
    きっとカーヴェは、そう遠からず再度あの店へ足を運ぶだろう。
    だって、去り際に見たアルハイゼンの微笑みを、また見たいと思ってしまったから!

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    ayanashi_k

    SPOILERカヴェアル新刊、「君色のプレゼント」にノベルティとして付けている小冊子(小説)の中身を期間限定で全文公開します。
    副題、カーヴェ先輩の前日譚。

    ※製本版とは収録方法の都合上、一部改行や空白の入れ方が異なりますが、文章の内容はそのままです。

    こちらの小説が付いてくる新刊の通販はこちら→https://ecs.toranoana.jp/joshi/ec/item/040031133762
    恋情オーバーフロー昔、アルハイゼンとまだ共同研究を進めていた頃のことだ。
    当時の僕は何度も彼に贈り物をしていた。
    カフェで売っていた新作の焼き菓子だとか、道端で見かけた綺麗な花だとか、本の栞だとか。それこそ思いつく限りありとあらゆるものを彼にプレゼントしたはずだ。
    恋人だった期間にはより顕著に、世話を焼きたいのもあって事あるごとに何かを渡した。
    あまりに頻度が高すぎて、当のアルハイゼンからは苦言を呈されることもあったくらいだ。
    そんな中でもとりわけ、強く記憶に残っている贈り物がある。
    あれはまだ付き合い始めたばかりの頃に何気なく贈った物で、当時、季節はちょうど秋から冬に変わり始める頃だった。
    僕の前では比較的表情を変えていたアルハイゼンが、ムッとした顔のままずっと静かで、話しかけても短い返事しか返ってこなくて、何か怒らせたかと焦ったのを覚えている。
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