かくあれかし 外は雪が降っている。
村外れは森林に面していて特に雪深く、明け方にはまた積もっているだろう。だが今日の雪掻きはきっと無駄ではない。放っておけば教会への道は閉ざされてしまうのだから。
ありふれた日々の繰り返しが如何に幸福であるか、過去の私は振り返ることも、また気付くこともなかった。
バタン。
「ん?」
遠くで窓の開く音がした。組んでいた指を解き、居間を出て屋敷の主の部屋に向かう。果たして、そこには雪を纏わせたノースディンが立っていた。
「ノースディン」
「……ああ」
吹雪の悪魔——いや、氷笑卿。纏わりついていた雪は全て氷結し、パラパラと床に落ちては砕けていく。その直中で、彼はその名の通り薄らと笑っていた。
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