yet 扉を開けるたびに出迎えてくれて、扉が開くたびに出迎えることが、すっかり馴染んだ頃。龍之介が思っていたより、虎於との生活は順調だった。
当初、家事全般が不得意だと思われた虎於も、洗濯物を取り込んだり食卓のセッティングや片付けをするようになっていた。
龍之介が家事負担について苦言を呈したことはない。ただ、家事をする龍之介のそばに寄ってきては手元を興味深く覗くので『やってみる?』と声を掛けたのがきっかけだったように思う。
渇いた土が水を欲するように、ぐんぐん吸収していく様子は見ていてとても嬉しい。それがささやかでも緑になって、小さくても花が咲くのなら、こんなに嬉しいことはないだろう。
つまり、虎於との生活は順調だった。本当に、思ったよりとても。
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