赤ちゃんと一緒「ねんねのあれそれ」【ねんねの実情】
赤ちゃんになってしまったヒースクリフとシノは基本的にネロと一緒に過ごしている。当然眠るのもネロの部屋で一緒に寝ている。
魔法でベッド大きくしたベッドで壁側に2人を寝かせ、ネロが柵になって。
実は初日に子どもたちが落ちないように魔法で柵を取り付けたのだったが、夜中ミルク作るのに起きた時に引っかかってしまったので直ぐに元に戻したのだった。
そしてヒースクリフとシノの2人が赤ちゃんになり早3日。
ネロは朝食と昼食の間の時間、すやすやと午前寝をしている2人を見つつ欠伸を噛み殺して濃いめに淹れたコーヒーを啜っていた。そんなネロの向かいには遅い朝食を摂り終えたファウストが座ってコーヒーを飲んでいる。
「あ、ここでしたね」
そこにやって来たのは賢者だ。サークルの中で眠る2人を見て頬を緩めるとネロの斜め前に座るファウストに声を掛けた。
「ファウスト、今いいですか?」
「構わないよ」
「では失礼して……すみません、ここが合っているか自信がなくて…」
賢者がメモと記録書を手にファウストにアドバイスをもらっている。
メモを取り終えると礼を言い、問題が解決したことに笑顔を見せる。
「お疲れさん」
ネロが賢者の分のコーヒーを淹れると賢者も着席してひと心地つく。
「よく寝てますね。夜もよく寝ますか?」
「うーん…比べるアテがないからわからないし、何日かしか一緒に過ごしてないからなんとも言えないけど2人ともいい子なんじゃねぇかな。まぁ、シノは基本的に手が掛からないけど夜泣きするかな。ヒースは良く寝るよ。けど、お腹が空いてシノより起きるかな」
ネロはそれが交代で来るからなかなか眠れない。一遍に起きてくれると助かるんだけど...と零す。
ファウストはそんなことになってるとは露知らず…賢者と顔を見合わせる。
「まあ、どっちもすぐ寝直すからいいんだけどな…」
ネロは頬杖をついたまま眠る2人を目を見る。
「《ヴォクスノク》」
「うおっ」
すると突然後ろから呪文が聴こえ、ネロの肩が跳ねる。
慌てて振り返るとオズがシュガー入りの瓶をネロの側に置いた。
ネロはオズと瓶とを見てよく分からない表情を浮かべている。
「幼い子どもの面倒を見るのは大変だろう」
そう言うとオズは眠っている2人を見る。
「あ、ありがとう、ございます…」
ネロが怖々と瓶を手にし、礼を言うとオズはキッチンへと食器を下げにいってしまった。
「びっくりした…」
ファウストは緊張が解け項垂れたネロの手からシュガーの瓶を取るとそのシュガーをネロのコーヒーに入れた。
「ふふ、彼は子どもには優しいからね」
「それよりもネロ、今晩は2人を預かります!」
「え?いやいや、いいよ。愚痴みたいに聞こえたかもしんないけどさ、そんなつもりじゃないから」
賢者の申し出にネロは慌てて顔の前で手を振って言った。
「それもそうだ。授業も依頼もないと言っても一日中働いているようなものだ、休む暇も無いだろう」
ファウストがネロをまっすぐ見て言う。
「いや、まぁ、そうだけど…昼寝させてる時に一緒に寝られるし...」
「昨日は買い出しと仕込みで、お昼は寝て無かったじゃないか」
賢者はその間俺がヒースクリフとシノと一緒だったんですから嘘ついてもダメですよ!と身を乗り出す。
「まぁ…昨日はたまたまで...」
視線を明後日に向けるネロにファウストはため息混じりに言う。
「大方、数日だから多少の睡眠不足は何とか乗り切ろうと思っているんだろう」
「……そういう訳では…」
「とにかく!今晩はネロもゆっくりしてください!!」
「いや、賢者さんの方が忙しい身だし、寝不足になったら大変だろ」
「僕も協力するよ。幸い、夜更かしは僕の得意分野だ。もちろん今からだって寝てくるといいよ」
渋るネロもファウストが援護するように言われれ、何かを言おうとして諦めた。
「じゃあ…お願いするよ」
こうして賢者とファウストの眠れぬ夜がはじまるのだった…。
【お昼寝とテクニック】
談話室で寝ているはずのヒースとシノ(赤子の姿)が、見当たらなかったのでファウストはネロの部屋を訪ねた。
鍵は開いており、ベッドの上には手前からネロ、ヒースクリフ、シノの順番で寝ている。シノはネロの伸ばされた手の掌を枕にして寝ていた。
ファウストはネロに用があり起こそうと思っていたが寝不足の件を思い出し、また出直そうとする。
するとそのタイミングで寝返りを打ったシノが衝撃でビクリとしたかと思うとぱちりと丸く大きな目を開けて泣き出す。
それに気がついたネロは、シノ、どうした…いるぞ、ここはお部屋だぞ…と目を閉じたままぽそぽそ話しかける。そして手探りでシノの体を引き寄せると額から耳の上を撫でる。
最初ほど大きな声ではないが止まない声に今度はヒースももぞもぞと動き出す。
まだ、ねてていいぞ....と眠気の混じる声で言いながら、今度はヒースとシノの身体を交互にポンポンと叩く。
少しすると泣き声は止み2人とも、また寝入った様子でもまた寝てしまう。
身体を起こしも、目も開けないまま再入眠させ再入眠した3人をファウストはぽかんと見つめるばかりであった。