ふ、とフウガの唇の隙間から紫煙が漏れる。
片膝を立て、襦袢だけをゆったりと纏ったフウガと吐き出される白い煙が月の光に照らされモクマの目を刺激する。ゆらりと火皿の煙が穏やかに立ち上る。背を僅かに丸めて煙を吸い、吐き出すフウガは絵画や美術品のようだと、柄にも無くモクマは感じていた。
吸うようになっていたのか。自らの腕を枕にして布団の中で俯せになっていたモクマは、フウガの姿を見上げる。
そういえば先程も、口づけた舌から、髪の隙間から、指先から。苦い独特の匂いを感じていた。感じていながらどうして核心で気がつかなかったのかは、モクマ自身が一番理由を理解している。認めたくは無かったが、あの指に、あの目に翻弄され、それどころではなかったのだということは認めざるを得なかった。
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