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    お茶🍵

    @yukiri_cya
    ジャンルごった煮になりそう

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    お茶🍵

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    拙宅ドルパロの双子がとある番組に出る話完全版。
    モブがとても良く喋ります。

    無人島番組に出るアイドル双子の話 『突然!無人島生活』
     それは、芸能人を一泊二日、無人島でサバイバルさせその様子をモニタリングする人気番組。遂にはゴールデンタイム進出を果たしたその番組が、記念すべき初放送回に出演者として白羽の矢を立てたのが、今をときめく人気アイドルのA/Fだった。
     A/Fが、気に入った仕事しかしない気難しい相手だとは業界内でも有名だった。だが二人が出れば視聴率は鰻登り。どうしても出て欲しい番組側は、あの手この手で出演オファーをしかけてくるので、近頃各局プレゼンの腕が上がって来たのでは? とはマネージャーの言。
     まんまと「楽しそう!」と釣られたアシッドの一存により、今回の出演は瞬く間に決定となった。
     そうして話題となった番組の放送日。予告では気になるシーンが寸止めで流され続けていたので、ファンも、そうで無い人も、テレビの前でいまか今かとその時を待っていた。
     

    ***

    「さぁー始まりました! 『突然!無人島生活』!!」
     威勢のいい司会者の一言で番組が始まる。スタジオゲストの紹介からの流れで、芸人達が賑やかにゴールデン進出を祝う。これまで無人島生活を送った芸能人のダイジェストが流れ、話題は本日の内容へ。
    「そして本日のサバイバーは! ねぇ? 頑張りましたよオファー!」
    「あの話題の双子ですよねぇ、よう出てくれたなぁ。ちなみに俺お兄ちゃん派」
    「お兄様と呼べデコ助野郎。ちなみに僕もお兄様担ですけども、これ皆さんホンマに楽しみにしてたんちゃいます?」

      “楽しみすぎて夜しか眠れませんでした!!!”
      “デコ助wwwあの芸人さてはお兄様ガチ勢だな”
      “いやほんとによく出てくれたよ…健康が捗る”
     SNSではファン達の呟きが怒涛の勢いで投下され、その期待の大きさを伺わせた。

    「いやぁ、正直撮れ高だらけで編集が大変だった今回! それでは早速、VTRスタート!」
     司会者の高らかな宣言と共に、映像は本編へと移る。

     青い空。それに負けじと青い海。小高い岸壁を背景に、浅瀬を進む人影が一人──いや、二人。
    「フォルテー、だいじょーぶー?」
    「だいじょぶ……くない」
     ほぼ同じ体格の男を背負い浅瀬を進むのは、今人気沸騰の双子アイドルA/Fの弟の方、アシッド。そしてぐったりとした様子で背負われているのがその兄、フォルテだ。
    「揺れる、もっと優しく運んでください」
    「いやそれおんぶして貰ってる側の態度じゃなくね!?」
    「やかましい響く」
    「超不機嫌じゃんこれからだぜお兄様〜重たいし〜」
    「僕は君より1.2キロ軽いです。」
    「1.2じゃ気休めにもなんねーんだわ。それはそうとフォルテも筋肉付けよ?」
    「やです」
     やり取りの最中表示される、【※お兄様絶賛船酔い中】のテロップ。

     『いや噂には聞いてたけど超仲いいですね!? いきなりおんぶスタートって』
     『フォルテ君めちゃくちゃぐったりじゃん大丈夫?』
     『やですってかわええなぁ』
     『素のテンションで呟くなや怖いわ』

     “【速報】お兄様の方が1.2キロ軽い【重要】”
     “アシくん鍛えたいのに鍛えられないみたいなこと言ってたもんね、お兄様と体格差ついちゃうの気にしてるんだ…”
     “おんぶ…おんぶ…”

     この番組では、可能な限りドローンと定点カメラ、そして出演者自身の手持ちカメラで、リアルなサバイバル生活を記録することがウリだ。
     浜にたどり着いた双子の映像は、ドローンから定点カメラへと移動する。
    「つっっっかれたぁー!」
    「ちょっと回復してきました……」
    「それはなにより。立てる?」
    「ん……」
     ここまでおんぶで運んできたアシッドの背からフォルテが降り立つ。少しふらついたところを、すかさず弟の手が腰を支えて引き寄せた。
    「何にも無いですね」
    「無人島だからねぇ」
     砂浜に立ち尽くす二人の後ろ姿。

     『フォルテ君が立ったー!!』
     『大自然に対しては特にコメント無いねんな』
     『アシッド君めっちゃ優しいやん……俺の弟もこうやったらなぁ』

     “お兄様限定スパダリなんだよなぁ…………”
     “もう慣れたけどこの距離感ですよ”
     “お兄様のコメントwww当たり前www”

     まずは拠点の当たりを付けるべく、砂浜を移動する二人。荷物(ずっとアシッドが二人分担いでいた)は明らかにフォルテの方が大きい。
     手頃な岩場を見つけ、一度腰を落ち着ける。
    「ここに拠点作ればいい感じだねー」
    「地面岩じゃないですか」
    「岩か砂しかないよ」
    「……」
    「サバイバルって言ってんじゃん」
     言いながらテキパキと枝葉を避けスペースを作るアシッド。不服そうな顔をしながら、フォルテはそれを眺める。
    「じゃあフォルテ、見せっこしよっか」
    「あぁ、はい。」
     このサバイバル番組の特別ルール。無人島へ、三つまで私物を持ち込むことができる。便利なサバイバルグッズを持ち込む者あり、ネタに走る者あり。番組最初の盛り上がり所だ。
    「オレはねぇ、これ〜!」
     アシッドが小ぶりのカバンからいそいそと取り出す。そこにはボトルが三つ。
    「フォルテの日焼け止めとー、オールインワンの化粧水とー、あとヘアオイル!」
    「…………無人島に来てまで……」
    「何言ってんのフォルテ! 無人島だからケアしないとか無いから!!!」

     『ちょっと待てwwwwww』
     『弟君はまともだと思ってたのに!? いやアイドルとしては重要なのかも知らんけど!!』
     『しかもお兄さんの分なの!?』

     “安定のwwwwwアシくん wwwwwww”
     “アシくんがお兄様の美容ガチ勢なのはファンの間ではあまりに有名”
     “フォルくんのめんどくさそうな顔www”

     弟の荷物を雑に避け(「あー!!」と悲鳴を上げながらアシッドが回収した)、今度はフォルテが持ち込み物を披露する。
    「僕はこれと」
    「本」
    「続きが気になったので」
    「いやいやいや」
    「それからこれです」
    「枕」
    「岩とかの上で眠れないですし」
    「やけに大きいと思ったら……生きるための行動をして???」

     『 お 前 が 言 う な 』
     『フォルテ君は今度自分のことしか考えてないwww』
     『何しに来たんやこの双子www』

     “お兄様もwwwww安定wwwwww”
     “お兄様と枕を担いで海渡らされたアシくんェ……”

    「……で、もう一つは?」
     脱力しながら、アシッドが最後の一つ、小袋を指して問う。
    「謎の小袋です」
    「謎の小袋」
    「マネージャーに何を持って行くか聞かれたので答えたら何故かため息をつかれ、あと一つ持てることを確認した後これを押し付けられました。」
    「やるじゃん敏腕マネ! フォルテが当てにならないって良く分かってるぅ」
    「ちょっと」
     抗議しかけたフォルテをスルーし、アシッドは先程片付けた枝葉を一箇所に集める。
    「とにかく食料確保だよフォルテ! 火も起こさないと」
    「火」
    「火」
    「……マッチとか無いんですか」
    「無人島サバイバルなんだよなぁ」
    「……」
    「オレも火起こしとかしたことないけど」
    「マネージャーが困った時これを開けろって」
    「困るの早すぎる気もするけど開けよっか」
     謎の小袋を開くフォルテ。ここまであまり動かなかったその表情が、パッと明るくなる。
    「アシッド!!」
    「なになに?」
    「マッチ! マッチです!」
    「ほんとだー!! やっべーさっすが敏腕マネ!!」

     『マネージャー有能すぎやろ!!』
     『今の流れだけで普段の苦労が察せられるな』
     『嬉しそうな顔そっくりやなぁ』
     『自分さっきから何目線やねん』

     “Aマネあまりに有能www”
     “テンションぶち上がりお兄様かわ……無人島ありがとう……”
     “そして当たり前に火を付けるのはアシくんなんだね”

    「オレ魚取ってくるね。フォルテは火の番してて」
    「はぁ……」
    「本読んでていいよ」
     火を起こし、適当な枝をくべた所でアシッドはそう告げ立ち上がった。漂流物のバケツを手に海へと向かう。
     残されたフォルテも、しばらく焚き火を眺めた後立ち上がる。
    「乾いた木、両手分くらいあれば足りるでしょうか」
     近くの茂みへ、薪の確保に出かけた。
     一方海では、アシッドがこれまた流れ着いていた素材で銛を作り上げていた。
    「これいっぺんやってみたかったんだよねー!」
     水着に着替えると、銛を手に海へと潜る。カメラは流石にダイバーカメラマンが出動する。水中で、時間が経過するほどに滑らかに泳ぎ出すアシッド。

     『フォルテ君ここまでポンコツやったけど一応ちゃんと考えててんな』
     『役割分担スムーズですね、流石兄弟』
     『アシッド君初めてなのにもう漁に慣れてきとるやん』

     “本読んでていいよって優しいし読まずにちゃんと役割果たすお兄様も偉い”
     “アシくんの腹筋……っ ※お兄様とウェイト1.2キロ差”
     “アシくんやっぱり運動神経いいよなぁ”

     〜三時間経過〜のテロップ。アシッドが海から上がった頃には陽が傾いていた。
    「つっっっかれたぁ、けどこんだけありゃ十分っしょ」
     バケツの中には中程まで海の幸が詰まっていた。一番の大物は両手サイズのタコ。バケツからはみ出た足がアシッドの手に絡みついている。
    「うははは、元気〜。フォルテに締めてもらおうなー」

     ~その頃のフォルテ~
     薪を両手に抱えて拠点へ戻ったフォルテ。火が消えかけていることに気付き、慌てて薪をくべる。
    「おなかが空きました……アシッド……」
     火を見つめながら呟く。火は何も答えることは無く、ゆらゆらとただ空気をかき混ぜる。

    『アシッド君大漁やん!ほんとに初めて!?』
    『フォルテ君船酔いの後だもんね、お腹空くよねぇ弟くん早くー!!』

     “お兄様からお呼び出しです!!! お客様の中にアシッド君!! アシッド君は!!!”
     “タコさん絞めるのお兄様なんだ……”
     “膝抱えて火見つめてるの儚い……元気にお腹空かせていたとしても儚い……”

     ほどなくして、フォルテが立ち上がる。突然の行動にドローンカメラが追いついていない中、辺りを物色しだすフォルテ。
    「これ、いいかも」
     流木の中から、一人で運べそうな大きさのものを引きずり出す。なんとか拠点まで運ぶと疲労困憊の様子。それでも二本、三本と木を集めてくる。
    「こ、これだけあれば……」
     集めた木を立てて、ぴたりと動きが止まるフォルテ。
    「…………アシッド……」
     どうやら、一人で立ててみたもののそこから動けなくなったようだ。
     しばらくそのまま静止するフォルテ。

     『動画やのに動きが無い……』
     『めっっっちゃ助けに行きたいんやけど今』
     『今行っても誰もおれへんで』

     “シ゛く゛早゛く゛来゛て゛げ゛て゛”
     “お兄様も頑張ってる……何したいのか全然分からないけど頑張ってる……!!”

     ~その頃のアシッド~
     「おっも!! タコ邪魔!! フォルテ寝てないかなー?」
     バケツを運びながら拠点へ向かうアシッド。拠点へ着くと、そこには木とビニールシートで簡易の屋根が組みあがっていた。
     〜フォルテの頑張りダイジェスト映像〜
    「えっすごっ。フォルテ作ってくれたんだ……フォルテ?」
     バケツを置き、辺りを見渡す。たき火には十分な薪がくべられていて、荷物も置いたままで。けれどフォルテの姿だけが無い。
    「フォルテー? ねぇー」
     裏の茂み、岩陰、いずれを確認しても見つからない。次第にアシッドの顔から表情が消えていく。

     映像は定点カメラへ。
     砂浜、穏やかに寄せる波。木の根元に腰を下ろし、海を眺めるフォルテの横顔。
    「──……、アシッド?」
    「…………」
     フォルテの後ろから腕を回し、その身体を抱き込むアシッド。

     『フォルテ君いたーー!! っていうか絶妙なところで切ったなぁ』
     『そこのお兄様ファン大丈夫ですか?』
     『ふじこ』
     『ふじこ???』

     “くぁwせdrftgyふじこlp”
     “ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待って”
     “突然のあすなろ抱き…………界隈焼野原なんだけど”

    「…………心配しましたか?」
     返事の代わりに、アシッドが更に抱き込んでくる。何も言わない弟に小さく笑って、フォルテは肩口にある同じ色の髪をかき混ぜた。
    「ごめん」
    「ん、許す」
     ようやく拘束を解いたアシッドは、ふん、と鼻を鳴らした後フォルテの隣に座りこむ。
    「海見てたの?」
    「えぇ……君のいる場所に繋がってるなと思って?」
    「うーーん、まぁそういうことにしといてあげる」
     二人並んで、ただ静かに海を眺める。やがてアシッドが甘えるように、フォルテの肩に頭を預けた。今度は、隣から。
    「重い」
    「オレフォルテのこと運んだ」
    「その節はありがとうございました、重い」
    「いいじゃんこれくらい」
    「…………」
    「なんかさ、家も無人島もあんまり変わんねーな」
    「そうですね。」
    「お腹空いたねー」
    「うん」
    ~二人は陽が傾くまで海を眺めていました~

     『ふじこ……ふじこ……』
     『こいつさっきから語彙これだけになってんねんけど』
     『家と無人島変わらんってどういう意味でしょうね』

     “こんなんもう世界遺産じゃん?”
     “心配したよね、よかったね、よかったねアシくん”
     “尊い以外の感情を忘れた…………”

     しんみりとした空気をぶった切り、軽快な音楽が流れだす。ここからは無人島生活の中でも要のお料理タイムだ。
     陽はすっかり落ちていた。暗闇を背景に、たき火の傍で調理を開始する二人。
    「元気ですねぇこのタコ」
    「バケツから盛大に逃げ出してやんの。元気ってことは美味しいってことだよね!」
     鷲掴みする手に絡みつくタコ。フォルテは構わず逆の手で胴体を掴み──

     ※手元はモザイクでお送りします※

    「うっわぁエッグぅ」
    「包丁も無いからこうするしか無いでしょう」
     タコを素手で引きちぎっていくフォルテ。隣でアシッドがドン引きしている。
    「そっか、ナイフとか持ってこればよかったんですね」
    「フォルテ今更気付いたのー」

     『いやもういっぺん言うけどお前が言うな?』
     『本持ってくる前に気付けたらよかったなぁ』
     『アイドルにあるまじき凄惨な映像……』

     “モwwwザwwwwイwwwwクwwwwwww”
     “兄用のケア用品を持ち込んだ弟「今更気付いたのー」”
     “Aマネ助けてーー!!”

    「あ、虫」
     アシッドの呟きとほぼ同時、フォルテが画面から消えた。すると横からの映像で、弟の背にぴったりとくっついていることが分かる。
    「アシッド」
    「うはー、でっけー流石無人島」
    「アシッド」
    「んーちょっと待ってねー」
     兄を背中から生やしたまま、アシッドが虫を鷲掴む。そのまま全力で海の方向へとぶん投げた。
    「飛んでったよお兄様ー」
    「触らないでくださいばっちいです」
    「お兄様の命でやったんだけど!!?」
    「けれどありがとうございます、君が居てくれるから僕は生きていけます」
    「この流れでそれ言われてオレどんな顔したらいいの?」
     解せない表情のアシッドを置いて、フォルテは何事も無かったかのように調理を再開する。
     〜千切りダコや魚の丸焼きを齧る二人の映像〜

     『虫駄目なんやぁ、かわええなぁ』
     『もうこいつには触れんときましょう』
     『結局見た目の割に男前な料理でしたね』

     “お兄様世紀の大告白(※ただし切っ掛けは虫)”
     “アシくん盾にしておいて「ばっちいです」wwwwww”
     “料理っていうかタコの火葬体って感じだけど美味しそう”


     夜会話。それはこの番組中盤、出演者のファンにとっては見逃すことのできないコーナーだ。番組の名物ディレクターと出演者が一人ずつ、本音で相手について語り合う。
     ディレクターのカメラがアシッドを映す。遠く背景には、焚き火のそばで座り込んでいるフォルテの背中。
    「お兄様?本読んでるよ、暗いから目悪くするよーって言ったんだけど」
    ──仲が良いんだね。
    「まーな!喧嘩もするけど、ちゃんと悪かった方が謝るから長引かないかな」
    ──今日も何度かヒヤッとしたけど。
    「ふふ、フォルテたまにとんでもないこと言い出すでしょ? ほんとおもしれーの」
    ──面白い?
    「うん、ずっと一緒にいるけど飽きないねぇ。っていうかさ、みんな今日のフォルテ見てポンコツだーとか思ったでしょ」
    ──そんなことは……
    「えー誤魔化すならもっとちゃんとやろーぜ! むしろ全然逆なんだけどなぁ」
    ──逆?
    「うん。俺たちさ、いわゆるこーつーいじってやつでさ。施設で大勢での生活がどうにも馴染めなくて結構早くから二人暮らししてたんだけど」
    ──それは……大変だったね。
    「そ、大変! だったはずなの。でもオレ大変だと思ったこと無くて。大変な部分、オレが気付く前にフォルテが全部やってくれてたの。ズルいよね。分けてくれたっていいのにさ、お兄ちゃんだからってぜーんぶやっちゃってた。」
    ──全部……それは。
    「うん、大変だよ。大変だったはずだけど、フォルテそんなこと一言も言わなかったし見せなかった。オレと同じ年頃の男の子だったはずなのに、欲しいものとかやりたいこととかもなーんにも言わないでさ」
    ──なるほど、フォルテくんらしいね。
    「でしょでしょー? でもね、一緒にデビューしてからはちょっと変わってきたんだ。今日みたいにさ、オレに任せてくれるようになったり、ちょっと我儘言ってみたり。なんかさ、守ってあげたくなっちゃう感じ?」
    ──分かる。
    「ふふ、可愛いでしょ。あげないよ。」
    ──ご馳走さまでした。

     『え……何めっちゃいい話やん』
     『なんか茶化してごめんってなりましたね』
     『アシッド君は今お兄さんがぽやぽやできてることが嬉しいんだねぇ』

     “仰げば尊死”
     “我が推しの恩”
     “二人の境遇はファンなら知ってるけど、ここまで踏み込んで語られたの初めてじゃない?”
     “ありがとう無人島生活……スポンサーの商品買っとくね……”

    ──お待たせしました。
    「アシッドは何か余計なことを話していたでしょう」
    ──そんなことは。
    「まぁ、いいです。嘘は吐かない子ですから」
    ──信頼しているんだね。
    「それはまぁ、生まれた時から一緒にいる訳ですし」
    ──今日も頼もしかったんじゃない?
    「そうですね、身体を張る系の仕事は任せると言ってあったので。おんぶさせてしまったのは申し訳なかったので、この後やりたいようにさせてあげるつもりです」
    ──この後?
    「ヒント、アシッドの持参物」
    ──ぁっ。
    「どうしてか僕のケアをするのが好きみたいで。変わってますよね。デビューするずっと前からで、一度本気で嫌がってみたこともあるんですが、凄く悲しそうな顔をされてしまったので。やっぱり面倒くさいんですけど、まぁそれで気が済むならいいかなって」
    ──弟くんを大切にしてるんだね。
    「今の話でなぜそうなるのかよく分かりませんが、まぁ、そうですね。たった一人の家族ですし」
    ──仲が良いんだね。
    「……ええ。仲良しに決まってるじゃありませんか」
    ──何か含みがあるような。このまま喧嘩せずに終われるといいね。
    「ふふ、それは確約できません」

     『相思相愛やん……』
     『俺兄弟とここまで仲良ぉないで』
     『この二人でお顔のケアとか絵面が麗しすぎますね』
     
     “アシくんの話をするお兄様の穏やかな表情と声で私、無事死亡”
     “会話の間中チラチラこっち見てるアシくんが可愛い……”
     “お兄様いつもめんどくさそうにしてるもんね……けど甘んじて受け入れて……それなんてBIG LOVE”

     夜会話を終え、焚き火のそばでお肌のケアをしている二人。
    「お風呂入れないとかありえねー」
    「無人島ですからねぇ」
    「それさっきの仕返しでしょ。帰ったらすぐ入ろ?」
    「えぇ、君は塩水でベタベタですし」
    「お兄様のために美味しいお魚獲って来たからねぇ」
    「美味しかったです」
    「それは何より」
     会話の間中、アシッドの手はフォルテの顔を包み込んでいた。フォルテも慣れた様子でそれを受け入れている。
    「というか君の髪こそ大ダメージでしょう、貸してください」
    「えっ」
     アシッドの傍らからヘアオイルを奪うと、遠慮なく手のひらに出して弟の髪へ触れるフォルテ。アシッドよりはいくらか雑ながら、その手がパサついた髪を梳いていく。
    「やってくれんの? やさしー」
    「まぁ、たまには」
     スキンケアをする弟と、ヘアケアをする兄。〜二人が整うまで30分かかりました〜のテロップと共に暗転。

     『いややっぱり仲良すぎでしょ』
     『麗しい……麗しい……』
     『今度はそれしか言えへんくなってる……』

     “出たよ美容ガチ勢”
     “ヘアオイルもう特定されてるけどそんな風にバシャバシャに使って良いお値段じゃないよお兄様(震え声)”

    「さ、寝るよフォルテー」
    「…………」
     アシッドが整えた簡易の寝床を無表情で見下ろすフォルテ。
    「岩じゃないですか」
    「岩の上に落ち葉をたっぷり敷いてビニールシートを被せたベッドでーす」
    「狭いし」
    「二人ならいけるっしょ」
    「君のベッドより狭い」
    「オレのベッドはダブルじゃん。これはシングルくらいだけどいけるって!」
    「…………」
    「もーわがまま言わないの! 寝るよ!」
    「んー……」
     ぐずるフォルテの手を引き、先にベッドへ寝転ぶアシッド。フォルテも渋々その横に身体を横たえる。
    「寝心地悪い……」
    「はははほんとだ、ウケる」
    「じゃあやっぱり枕は正解じゃないですか」
    「ほんとだ! さっすがフォルテ!」
    「清々しいまでの手のひら返し……って、何頭乗せてるんですか」
    「えーせっかくあるんだし二人で使おうよ」
    「僕のです」
    「元々オレがあげたやつじゃん」
    「僕が貰ったやつです」
    「もーフォルテうるさいー寝るよー」
     ぐだぐだと言いながらも追い出すことなく、二人並んで落ち着いた様子。狭い、だの呟く声もやがて途切れる。
    「フォルテ、もう寝た?」
    「ん……寝た」
    「そっかー、おやすみ」
     〜満点の星空の下で、おやすみなさい〜

     『ほんと喧嘩になりそうでせぇへんな』
     『フォルテ君わがままだけどさっきの話聞いた後だと微笑ましいですね』
     
     “一緒の!? 枕で!!? 寝!!!??!??、!?る!!”
     “お兄様アシくんのベッドで寝てるんですかねえその辺詳しく”
     “枕……案の定アシくんのプレゼントだった……”
     “可愛すぎてもうずっと具合が悪い”


     〜翌朝〜
     まだ日の登り切らない空を背景に、起き上がる人影がひとつ。
     〜アシッドの朝は早い〜
     欠伸をひとつし、徐ろにボトルを手に取るアシッド。手のひらに中身を開けると、軽く伸ばしてからフォルテに手を伸ばす。寝ているフォルテの腕を持ち上げ。
    「日焼け止め塗るよー、フォルテ」
    「ん……」
    「ちょっと上げるねー」
    「んん……」
     腕、足、顔。露出する部分に丁寧に塗り込んだ後、手早く自分にも日焼け対策を施すアシッド。そうこうする内に日が登り始める。

     『ってちょっと待て、朝一やることがそれかいな!』
     『アシッド君メモでお兄様の美容ガチ勢ってありましたけど、なるほど』

     “フォルくん寝てるのにwww”
     “お兄様塗りたくられてるのに起きないwwwwww”
     “むしろアシくんお疲れだろうにこれのために早起きするのめっちゃ偉い”

     遅れて起きてきたフォルテ。ぼんやりと眠そうな兄を揺すりながら、アシッドは朝食の話を始める。
    「昨日の魚がちょっと残ってるし、今度は山の方行ってみねぇ?」
    「んん……やま……?」
    「キノコとかさー、何か食べれるものあるっしょ!」
    「きのこ……」
     フォルテがぼんやりとしたまま頷いてしまったので、寝起きで山の散策が決定した。

     山の幸を収穫し(〜一部ディレクターが慌てて止めた食材があります〜のテロップ)、海と山の幸スープを作って食べ、そうこうしている内に24時間が経過。
     双子アイドルは無事、無人島生活を終えたのだった。

     ゴールデン進出となった番組も、無事高視聴率での船出となったのだとか。
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