魔獣の花嫁 #5「面影と眼差し(前編)」 四年前のあの日から俺は、シェゾ・クォンティーと名を変えた。亡き父レナルドルフからこの名をもらった当時、俺はこんなものいらないと抗議したのだが、今となってはこれも父にもらった大切なものになってしまった。
俺がまだ何も知らないガキの頃。クーデターが起こる前のリムブルムは、地方での争いが頻繁にあった。だから生まれて直ぐ預けられた孤児院には俺のような子供が何人もいた。そしてとうとうその孤児院までもが戦火に巻き込まれる。村に火を掛け、同じ国の兵士たちが雪崩れ込んで来て、暴行と略奪を行うのだ。
ただ支持している貴族が違うだとかそんな理由で、最も容易く刃は向けられる。一度そうなって仕舞えば、後は理由なんて置き去りで良い。俺にはただ暴れたくて理由を付けているように見えた。だから女子供でも気分次第で傷付ける。
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