サクラ「見てくれ、ファング、アーモンドの花だ!」
こんなにたくさん、と木の下でくるくる回ると、ファングが溜息がちに肩を落とす。
「サクラだ。ちょっと違う」
「ふうん、違うんだ?」
ほんのり薄ピンク色の、優し気な花びらが舞う。おいしそうな匂いがする。花びらはきっと食べられないけれど。
「オレだって詳しいわけじゃねーよ」
「まあ、そりゃそうだよね」
ファングが花に詳しいだなんて、そんなハズがない。仕事で庭園に寄ったって、見向きもしないんだから。セブンだって笑うはずだ。
「……あ」
「どうしたの?」
「バラ科だな、アーモンドもサクラ」
「へえ」
胸の紋章が躍る。僕らは薔薇に囲まれて生きている。血を吸って真っ赤な、絢爛な花。
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