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    guiterlee

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    guiterlee

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    ポイピクって字もアップできるんだ…
    ジョルアバ好きだけど想像するのは9割付き合ってない

    芽生えゆったりとした空気が流れる平日の昼下がり。一番にアジトへ帰ってきたアバッキオはほかのメンバーの帰りを待っていた。次の任務までぼんやりと一人でまどろむこの時間は、ほっと落ち着く心地よいひとときだった。彼が苦手意識をもつ少年が帰ってくるまでは。

    (よりによってこいつと二人きりか…)

    ふわふわと揺れる三つ編みが目に入り、思わず心の中でひとりごちる。学校の授業を終えたらしいジョルノだ。いまだに彼への警戒心を捨てきれないアバッキオは、挨拶だけは交わし無言で遠くを眺めていた。すると少年がいつもの真っすぐな眼差しのまま、あまりにも意外なことを聞いてきたので、つい間抜けな声で聞き返してしまう。

    「勉強を教えてほしい…?俺に?」
    「そういうのはフーゴにでも頼んだ方がいいんじゃあねえのか、得意だろ」
    「フーゴはナランチャに教えるので忙しそうですし、そうなるとあなたが適任かなと」

    (なんだって俺に数学を聞くんだよ。…確かにフーゴ以外の奴らは当てにならんが。こいつにとっちゃ学校の勉強なんざ造作もないだろう)
    (大体、寮に帰って上級生にでも聞けばいいじゃねえか)

    そう言いかけたが、これから任務を控えている状況で、手近にいる自分を頼るのも無理はないかと思い直し指摘するのをやめた。
    学業と仕事で慌ただしい日々を送るジョルノを、幾ばくかは暇な大人の自分が助けてやってもいいか。暖かな陽気の中で、アバッキオの心持ちも普段よりゆるやかになっていた。

    「……教科は?」
    「数学です」
    「数学か…どれ、どこが分かんねえのか見せてみな」

    ーーーー

    ったく、なんで俺が、とかぶつぶつ文句を言いながらもアバッキオはジョルノの教科書に手を伸ばす。口調はきついがなんだかんだいって面倒見がいい彼だから、きっとこのお願いも請けてくれるだろうとジョルノは予想していた。

    本当は数学を教えてほしいなんて嘘、話しかけるための口実だ。

    (物理的にも心理的にも距離を縮めたくて、あんたのいう「クソガキ」の身分を利用させてもらった)

    顔にかかり邪魔になったのか、アバッキオがさらさらとした長髪をすくいあげて耳にかけた。午後のやわらかな日差しに照らされた白い首筋に、思わず目を奪われる。視線に気付かれたらきっとまた小言を言われるだろうけど、今はそっと見つめていたかった。
    伏せた長いまつ毛は教科書の文字を追っていて、その繊細な動きを見ていると、自分のために行動してくれたことへの嬉しさがこみ上げる。

    ーーーー

    「ここ、この問題の解き方です」

    ジョルノがすっと無意識に身を寄せてきて、肩が触れた瞬間、アバッキオは心臓が跳ねるのを感じて反射的にのけぞった。なにかと気に入らない奴ではあるが、至近距離で見るジョルノの横顔の、その造形の美しさだけは認めざるを得ない自分がいた。

    「ちょ、近い、もっと離れろ」
    「あ、すみません。でもここが…」

    またしてもジョルノが近付く。柔らかな金髪が動くたびに、甘い香りがふんわりと鼻をくすぐった。

    「悪りぃが、もう忘れてる。教えられそうにないわ」
    「そうですか…わかりました。ありがとうございます」

    本当は忘れたなんてのは嘘、このレベルの数学なら朝飯前だ。
    理由は分からないが、ジョルノにこれ以上自分のテリトリーに入られることにいいようもない胸のざわめきを感じ、この時間をはやく終わらせたかった。

    (なんで俺が、こんな十五歳のガキのことを気にしなきゃならねえんだ?あり得ねえ…)

    「ありがとう、アバッキオ」

    瑞々しく輝く若葉色の瞳とばっちりと目が合い、アバッキオは思わず顔を背け目をそらした。
    嫌味ったらしいほど爽やかな笑みを浮かべた少年を直視できない自分が情けなくて、なにかに負けた気分になる。

    「しつこいんだよ…第一教えてないだろうが」

    かつてはもっと近い距離で説教していたはずだ。なのに今はなぜこれ以上ジョルノに近づきたくないと思うのか。鳴りやまない心臓の音に気付いて、さらに胸が速くなる。顔がひどく熱いのは、春の陽だまりに包まれてのぼせたせいだと思いこむことにした。
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