淑女伴と息子ノ上続き坂の上の子。
(×坂ノ上の子、◯坂ノ上庚二の上の子)
伴くんは彼の事が苦手だった。
坂の血を引くだけあって端正な顔立ち。礼儀正しく頭も良い。伴くんが坂ノ上家に来たのは彼が小学校に上る前くらいかな。サカノウエ家の長男として申し分のないしっかりした男児だと周りからの評価もよかった。皆の期待を一身に背負い学校では難なく常に首席、立派な青年に育っている。
伴くんは坂の子供とは挨拶程度、用事がなければ接する機会はあまりない。(坂はちゃんと父親してる。)
特に意味ありげな事を言ってくる訳ではないが昔から彼は伴くんに興味がある様だった。
じっと見つめてくるあの目。
坂に似た目で遠慮なく見つめてくるのだ。坂の熱を孕んだ目に近いものを感じている伴くん。
まあ、坂も奥さんも居る家で馬鹿な真似はしないだろうと思っている伴くん。
坂の帰りが遅くなったある晩に息子ノ上が伴くんの部屋を訪れた。
「お母さん、俺今年20歳にりますよね。」
(実母は母上、伴くんの事はお母さんと呼んでいる設定)
「俺、成人したら父に付いて色んな会合に行かなくちゃならなくなるんです。坂ノ上の長男として顔売らないとなんですよね。それでお母さんにお願いがあって……俺にスーツを仕立ててくれませんか?」
「……いけませんよ。それは○○(息子名)さんの御母上とお決めになるべきですよ。」
「はい…でも俺はお母さんに作って欲しいんです。俺はずっとお母さんに服を作って欲しかったけど小さい頃からずっとずっと我慢してたんです。だからお願いします。」
「………御母上と一緒にご贔屓のお店に行って仕立ててもらってください。」
「お母さんどうかお願いしま…」
「それとは別にもう一着、私からの成人祝として贈らせて頂きますね…」
「…! お母さん!!ありがとうございます。」
話が長引くのも嫌だし、これなら問題ないだろと引き受けた伴くん。
早く取り掛かりたいからと、今から採寸してもよろしいですか?と息子に言う。また後日呼ぶのも嫌だからね。
お互い無言で、伴くんの美しい衣擦れの音とともに手際よく採寸が進んでいく。
「やっとお母さんを独り占めできた」
「!」
息子ノ上に握られた伴くんの手。
「良いでしょう?子供が母の手を握るくらい。」
「○○さん、これでは採寸ができませんよ。」
「この時間が終わらないのは都合が良いなあ。はは。……少しだけ。少しだけですから。」
「わかりました、少しだけですよ。」
手を握りながらあの目(坂似の熱い目線)で見てくる。無言で。とても居心地が悪い伴くん。
「○○さんは御父上譲りの立派な体躯でいらっしゃるのですね。御父上の様に女性達が放っておかないのではないですか?…そういえば、そろそろお帰りになられる頃でしょうかね…」
たまらず坂の話題を出した伴くん。
「……帰って来なければ良いのに」
「えっ……」
「あんな人帰って来なければいいのにって。いつも思ってます。」
「なんて事を…」
「憎んでいるに決まっているでしょう。」
「…………」
「でも貴方の事は大好きです。」握る手に力が入る。
「…!」(ヤバイ、ヤられるかも、なんとかしないと)
「自分の欲望のためだけに貴方をこんなめんどくさい家に連れて帰ってくるなんて……どんなに貴方が辛い思いをしてきた事か…心底許せない。あんな奴戦争から帰って来なければ良かった、いっそ特攻にでも行って…」
ダンッッ!
息子ノ上の視界がぐるんと回る。
胸ぐらをつかまれ、足を蹴られ、床に叩きつけられた息子ノ上。
上に乗る伴くん。
鼻先が触れそうな距離に青筋立ててでっかく見開かれた目の伴くんのお顔が。
「それ以上言うんじゃねえ」(ドスの効いたお声)
「っつ!」
グイッ
「?!」
伴くん乗ったまま上体起こす息子ノ上。
「はっやっぱりね!」
「…!」
「父が綺麗で慎ましやかなだけの人間にここまで入れ込むなんておかしいと思ってたんだ。やっと見れた、本当のあなたを!」
「?」
「俺もこっちの貴方の方がもっと好きだなあ、お母さん?」
「…は?」
「あっすみません、俺こう見えて父の事そんなに嫌いじゃないんです、感謝もしてます。」
「……」
※すんごい中途半端な所ですが、繁忙期落ち着いたら続き書く……気です😂