心霊写真夜道を危なっかしく歩く男が、往来の激しい車道へふらふらと吸い寄せられていくものだから、俺は咄嗟に男の腕を強く引いた。目の前を大型のダンプが通り過ぎ、その風圧で前髪が揺れた。
「酔っ払ってるのかよ、あんた」
男が振り返る。そうして俺を見るや、まるで幽霊にでも会ったみたいに、目をまんまるに見開いた。
「大丈夫かよ。ここから一人で、帰れるか」
俺の質問に、男は無理だと返した。なら警察に。それも嫌だ。俺の提案は食い気味に拒否される。
「仕方がないから、俺の家に来るか」
咄嗟にそんなことを口走った自分自身に驚く。見ず知らずの人間を家に招くなど、普段であればまず考えもしないことだ。けれど今はなぜか、目の前の男を助けてやることが、もっとも自然な行動に思えた。
3587