レーベモン夢 身体中のフォービドゥンデータが剥がれ落ちるのを感じる。己の視界が晴れてゆく。見たかった顔をようやく目にすることが出来た。
「…琴葉。ようやく君の名を言えたよ」
「ライオン、さん…?」
「ふふ。初めて会った時もそう言ってくれたね。…君は覚えてないだろうけど…」
黒き獅子を纏う闘士。改めてレーベモンと名乗る。驚いたままの彼女は、不安がった。
「ダスクモンは、どこへ…」
「説明しなければならないね。ダスクモンとは私が退化した姿。本来の闇の闘士はこの姿なんだよ」
彼女と視線を合わせたくて、軽く膝を曲げる。しかし琴葉は体を強ばらせて後ずさった。
「…本当なんだよ。私が、真の闇の闘士で君のパートナー。これからは、私が君を守るから。…だからそんな顔をしないでおくれ」
無理もない。ダスクモンとして過ごしてきた時間の方が多すぎる。急に現れた私に警戒がとけるはずはない。それでも私は嬉しくて堪らなかった。
戦争中に無垢な少女を見た時、この子が助かるなら死んでもいいと思ったくらいに。君は大切な私の人の子なんだ。
「今度は私が君を守るから。誰にも触れさせない。君の純潔は私が守る。君のパートナーデジモンとして」
琴葉は問うた。ダスクモンに戻ることはないのかと。
「…。残念ながら」
嘘、ではない。フォービドゥンデータが消去された今、退化は難しいだろう。ただ、何かの攻撃や精神的疲労によって退化する可能性は十分にある。
意地悪にそう返せば、琴葉は悲しみに顔を染めた。
嗚呼すまない。それでも私が君を守ってあげたかったんだ。その想いが、ダスクモンにも伝わっていたことには驚いたけれど。
「ゆっくりでいい。徐々に私に慣れてくれれば」
そう言いつつ、彼女の体を抱きしめた。強ばる筋肉を解すように、優しく、丁寧に。
嫉妬深くてごめんね。それほど私は、あの頃から君に恋焦がれていたんだ。