不意打ちアイラブユー「今夜もいい夜だね、ジョン」
「ヌンヌン!」
今宵、夜のそぞろ歩きを楽しむドラルクとジョンのはるか頭上では、大きな満月が煌々と輝きを放ちその存在を主張していた。
それに気づいたドラルクは、少しでも近くで月を見られるようにと思い、かわいい使い魔を自身の頭の上に乗せてやる。
「ごらん、ジョン。今夜は満月だ」
「ヌー!」
「綺麗だねぇ」と微笑む主人に、ジョンも嬉しげな声を上げる。
「四月の満月はピンクムーンって言うんだっけ?」
「ヌン」
「日本語訳はたしか、桃色月だったかな。でも私は、この時期には桃色より桜色のほうがふさわしいと思うのだよね」
そう言ってドラルクが視線を向ける先には――
桜、桜、桜。
満開を少しすぎ、それでもまだまだ道行く人々の目を楽しませてくれる桜並木。月明かりに照らされてはらはらと花弁を舞わせる木々たちの姿は、なんとも美しいものだ。
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