はじめて「お、グラコロ今日からか。食いに行こ」
「あれって、美味しいんですか?」
スマートフォンを見ながらなんとなしに口にした言葉に反応した君島に、遠野は目を丸くした。
「お前……食ったことねえの?」
「ありませんね」
「まさか……ファストフード自体食ったことねえとか言わねーだろうな」
「なくはないですが、あんまり……CMもやったことありませんし」
やはり私のイメージには合わないんでしょうか、とどこかズレたことを言う君島に、遠野はつくづくこの男が規格外であることを思わされた。
「お前、人生損してるな」
「は?︎ なんですかいきなり、失礼な人ですね」
眉を吊り上げる君島も意に介さず、遠野は思いついたことを続けた。
「今日お前オフだろ」
「ええ、それが何か」
「食いに行くぞ。善は急げだ」
「えっ⁉︎」
遠野は君島の手を引いて、合宿所のドアを豪快に開けた。すれ違う入江や種ヶ島がにやにやした顔で見てきても気にしない。休養日のもうすぐ昼になろうとする頃のこと。
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