告白「どうやら、私は遠野くんのことが好きなようです」
そう告げた君島の表情は、とても想い人に懸想する者の顔ではなかった。俯いて唇を噛みしめる様は、己の咎を認めた罪人のようですらあり、悲愴感に溢れている。
「ふうん、俺も好きだぜ、君島」
「は⁉︎」
「んだよそれ、お前が言ったんだろ」
あっけらかんと返した遠野の返事に、君島は信じられないと目を剥いた。自分の態度は棚に上げて、目の前の蒼白い顔をした男が同じ気持ちであるとは、到底受け入れがたい。現に、遠野は頬を赤らめるでもなく、動揺に長いまつ毛を揺らすわけでもなく、至極平然と同意の言葉を口にした。だが、君島は知っている。この男が良くも悪くも嘘をつかないということを。
「……だって、アナタ全くそんな風に見えないじゃないですか」
「テメェこそ、俺のこと嫌いなのかと思ってたぜ」
「……」
君島はぐっと言葉に詰まった。そう思われても仕方がない、現に彼のプレイスタイルは大嫌いで、今だってそこに関しては好ましくはない。ただ、遠野という人間に異常なほど執着している自分に気づき、それが恋慕だということを自覚した瞬間、絶望した。それと同時に、この男を何としてでも手中に収めなければならないとも思った。
「俺のことが好きって言うなら、まずは俺を信じるんだな」
「あっ」
遠野は君島の手首を掴んで引き寄せ、己の胸に押しつけた。手のひらに伝わる、どくどくと脈打つ心音。君島はそれが自分のものと変わらない速さであることに息を呑んだ。
「な、同じだろ」
そう言ってニヤリと笑う遠野の顔はいつもと変わらないはずなのに、どうしようもなく美しい。結局自分は蠱惑的な悪魔に捕らわれた憐れな人間に成り果ててしまったのだと、君島は頭の中で負け惜しみを呟きながら、広い背中に腕を回した。
End.