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    pukarond

    壁打ちアカウントの墓地

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    pukarond

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    #千奏版深夜の60分一本勝負
    千奏ワンライ『ラブレター』
    ※ラブレターをしたためる奏汰と同室組+藍良の話
    ※千秋の出番は名前だけですすみません

    #千奏
    thousandsOfPlayers
    #ちあかな
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    ラブレター「やあやあ!僕が帰ってきたよ!」
    「ただいまかえりました~」
     昼過ぎの星奏館。
     シャッフルユニットでの活動が一区切りし、合宿生活を終えた日和と奏汰は元々の寮の部屋に戻ってきた。
    「おお、お疲れさん」
    「お疲れ様です、お邪魔してます……」
     部屋の中に入ると、そこには住人である燐音と、彼と一緒にテレビを見ている藍良がいた。
     奏汰と日和と燐音と、三人ともそこそこ顔が広く賑やかな場所を好むため、この部屋に来るゲストは多いのだが、藍良が一人で訪れているのは初めてだった。
     物珍しそうなものを見る奏汰と日和の視線に気がついた彼は「燐音先輩に引きずり込まれたんですう」と訴える。
    「『くんしゅ』さん、ゆうかいはだめですよ?」
    「いや、誘拐はしてねェって」
     くすくす、と笑う奏汰と燐音を藍良は交互に見た。部屋割りを聞いた瞬間は、そこ大丈夫なのォ?と思った三人部屋だが、意外と三人の馬が合うらしく、いつ訪れても居心地は良い。
    「シャッフルユニットお疲れ様です、かぐや姫のパロディ?オマージュ?だったんですよね?」
     大好きなアイドルでありサークルの先輩でもある日和がいる為、話題に困ることもない。
    「そうだよ」
    「求婚を突っぱねて誰のものにもならず、高潔なまま月に還るお姫様。まさにEdenっぽくてらぶぅ~い!」
    「あいらは、おひめさまもすきなんですね~?」
     はい!と藍良は金色の髪が乱れるほどに勢いよく頷く。
    「おやおや藍ちゃん。誰のものにもならねぇけど、かぐや姫は最後には帝にラブレターを残してから還るんだぜ」
    「ラブレター?」
     ほう、と荷解きをしていた日和は感嘆の声をあげた。
    「燐音先輩、意外と物知りだね」
    「いがいと『きょうよう』があるんですね~」
    「失礼じゃね?」
     同室の二人組からの少しトゲのある言い方に、燐音は肩を竦める。
     そんなやりとりを頭に疑問符を浮かべながら聞いていた藍良に、日和は笑いかけた。
    「いまはとて天の羽衣着る折ぞ君を哀れと思い知りぬるというやつだね!」
    「ん?」
    「『ものがたり』なので、うけとめかたは『ひとそれぞれ』ですが、さいごのさいごにあなたの『おもい』のありがたさをしった、という『うた』です」
     そうして理解し始めた想いも、天の羽衣を着ると全て忘れてしまい、何もかもを断ち切って天に還ってしまう。
    「へえ、らぶいかも」

    「なるほど~たまには『きょう』をこらして、『わか』の『らぶれたぁ』でもしたためてみましょうか~」
     いいアイディアが思い付いた、とばかりに突然声をあげた奏汰に、他の三人が一斉に振り向く。
    「ちょうど『ほぉるはんず』のおへんじに、こまっていたところなんです~」
    「相手に伝わらなきゃ意味なくねェ?」
     そもそも、ラブレターを返すようなホールハンズのメッセージって何だ?と燐音も日和も藍良も疑問に思う中、奏汰は自信満々に言い放った。
    「だいじょうぶです!ちあきはああみえても『どくしょか』で『きょうよう』があるので~?」
     あ、相手は守沢先輩なんだ。と、藍良は思った。
     確かに流星隊のファンの間でも近すぎる距離がよく話題になるし、ESに入ってからアイドル同士でお付き合いをしている例も何人か見てきているから、特段驚きはしないが。
     もうちょっと隠したほうがいいというか。でも、申し訳ないけど一見スチャラカそうな千秋と奏汰が実はけっこう頭が良くて、和歌を送り合えるくらいだとか、それってとてもとてもらぶい。
     でも。
    「これ、俺は聞いててもいいやつ?」
     藍良の心配をよそに、燐音は面白そうにギャハハと笑った。
    「なんだ?『天の川相向き立ちて我が恋し、君来ますなり紐解き設けな』とでも送るかァ?」
    「えっちですね~」
     え?なになに?と燐音と奏汰を見る藍良に、日和がそっと耳打ちをする。
    「七夕の天の川でね、私が恋い慕っている彼の方が来るから衣の紐を解いて待っていよう、という意味」
     ひゃあ、と可愛い声が上がった。
    「じゃあ『嘆きつつ一人寝る夜の明くる間は、いかに久しきものとかは知る』か?」
    「燐音先輩、夜系から離れない?」
     少々冷ややかな日和の視線から察するに、またちょっとそういう系の歌のようだ。
     今度は奏汰がこそっと「ひとりねがつらい、という『うた』ですね」と教えてくれた。
     当たり前に年の差が開いているのだが、三人とも大人だぁ――と藍良は感心してしまった。
    「そういう日和ちゃんは恋人に送るならどんな歌よ」
     なんだかすごい会話になってきているので、藍良は逃げ出したいしこんなプライベートなこと聞いてはいけないと思いを抱えつつ、でもこんな会話滅多に聞けないんじゃ?と日和の言葉を待つ。
    「うーん。『人の寝る味宿は寝ずてはしきやし、君が目すらを欲りて嘆くも』?」
    「ロマンチストだねェ」
     うんうん、と頷く燐音。
    「悪い?」
    「いいえ、『おひさま』さんっぽいです~」
     からかうような燐音の口調に一瞬視線を鋭くした日和だったが、笑顔の奏汰の高評価を受けて、ぴりぴりした雰囲気をゆるめる。
     この二人、こういうところがらぶいんだよなぁ。と、藍良は思っている。
     ちなみに今の意味は?と燐音を小突くと「この頃は色々と思い乱れてゆっくり寝られず、愛しいあなたの目を見たいと思って嘆いています」とのこと。
     確かにきゅんとしてらぶい。
    「で、かなっちは?」
     うーん、と奏汰は唸った。
    「べたですけど、『きみがためおしからざりしいのちさえ、ながくもかなとおもいぬるかな』」
     ホールハンズに丁寧に一文字ずつ打ち込みながら、言った。
     あ、それ本当に送るんだ。と三人で見守る。
     アイドル同士の連絡ツールとして支給されているものだけれど、私的利用すぎなくはないか。
    「ベタだけど重いねェ」
    「千秋くんに対する思いがそれだけ重いつてことだね」
     だって、元々といえば奏汰は千秋が生きて欲しいと願ったからここにいる。
     千秋がアイドルの奏汰を見たくて、友達になりたくて、奏汰のことをもっといっぱい知りたいと言ってくれたから奏汰も地上で生きる決心をして、海の中から這い上がってきたのだ。
     そして、奏汰も千秋のことを知りたいと思った頃には友達の枠はとっくに越えてしまっていて、もっと暖かいものになっていた。
    「あ」
     あとは送信ボタンを押すだけ、というところまで本文を打ったところで、奏汰は手を止めた。
    「やっぱり『こっち』にします」
     メッセージを全部消して、新たに文章を打ち込むために指を動かす。
     ふんふんと鼻歌をまじえて上機嫌な彼が送信ボタンを押して指を離すのを待ってから、日和は聞いた。
    「何て送ったの?」
     その問いかけに奏汰は初恋を覚えた少女のように笑い、空に浮かぶしゃぼん玉のような声で囁いた。
    「『いつわしもこいぬときとはあらねども、ゆうかたまけてこうはすべなし』」
     それはそれは、と日和も日だまりのような笑みを浮かべて言った。
    「千秋くん、飛んで来るね」



    ※君がため惜しからざりし命さへ 長くもかなと思ひぬるかな
    あなたのためなら、捨てても惜しくはないと思っていた命でさえ、逢瀬を遂げた今となってはできるだけ長くありたいと思うようになりました。

    ※いつはしも恋ひぬ時とはあらねども 夕かたまけて恋ふはすべなし
     朝昼晩あなたのことが恋しくない時はないけれど、とりわけ夕暮れ時になると、恋しくてどうしようもなくなるのです。

    これに対する千秋の返歌まで考えようとしましたが私の教養が足りませんでした
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