3. 猫の信頼度 母は子に愛情が持てぬ人のようだった。
ただしくは世間一般でいうような愛情、というべきか。それは善や悪で判断されるものでなく「他の人びとのような反応を持ち合わせていない」ただそれだけのことだ。猫猫は他を知らないのだから比べようがないし、母の心のうちは誰にもわからない。
父親はと言えば母に対して深い愛情を持っていたようだが、それはあまり本人に伝わっていなかったようだ。お互いに不器用すぎて口にして伝えるべきものと思っていなかったのかもしれない。いずれにせよ後日他人から聞いた推測に過ぎないから、母のいない今となっては、実際どうだったのか知る由もない。
幼い頃、既に病を得ていた母と接した記憶はあまり残っていないが、猫猫には母の妹分であり代わりに世話をやいてくれた小姐達が居たし、物心つく頃には養父である羅門がそばにいてくれた。愛情を知らないわけではない。
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