「お一人様二点限りなら、頭数は多い方がいいだろ?」とわたしの手をしっかり握って、さらに腰をがっちりホールドしたハナマルが小走りにならないくらいの歩幅で進んだ先は一軒の菓子店。
そこはかとなく母国の気配が漂うそこに馴染みがあるらしい彼はわたしを連れてのれんを潜っていく。頭に掠りもしない藍色のそれはハナマルのふわふわの髪を撫でて揺れた。
「豆大福、よっつお願いね」
今にも鼻歌が宙を舞いそうな横顔の綻びを少しだけ見つめて、あまりじっと凝視するのも熱愛中のカップルじゃあるまいし、なんて視線を店内の装飾に向ける。長方形のガラスが組み合わされたショーケースの中、閉じ込められたまあるい一口大の練りきりっぽいものがお行儀良く並んでいる。
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