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    まさん

    とても人見知り
    トンデモ設定のオンパレード
    アイコンは白イルカのはずだった

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🍵 🍷 🎻
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    まさん

    DONE🦈が作る料理の話フロイド先輩の作る料理はどれもおいしい。思わず頬が弛むような、いつまでも噛み締めていたくなるような。
    最初の頃はもうちょっと、なんていうか、尖ってた。きっと隠し味に難しいスパイスとか使ってたんだろう、庶民的な舌を持つわたしにはどうも大人っぽい、余所行きの感じがしていた。
    それがいつの頃だったか、味付けが変わった。そもそもそんなにモストロラウンジに通い詰める訳でもなく、たまに彼の気まぐれで店に連行されて提供されるワンプレートランチ。いつだったか。オンボロ寮までの道のりをひとりちんたら歩きながらゆっくり記憶を遡る。

    『小エビちゃん、おいしい?』

    いつも訊ねる声色が、ただそれだけだった接触が、大きくて温い左手を伴ってわたしの頬に触れた時があった。
    きっとその時もわたしはおいしいと答えたはず。こんがりグリルされたお肉に添えられたローズマリーを端に除けたところで、ちゃんと彼の目を見て答えたはず。
    考え中でも辿り着くようになったオンボロ寮のエントランス、ドアを開けると夜行性のゴーストたちはまだ大人しい。グリムは居残り勉強、きっとふなふな鳴いてる。
    ……ふと、キッチンからいい匂いがしてきた。そっ 2364

    まさん

    DONE付き合って二週間の🦈🦐
    お誘いを断ったら嫌われちゃうんじゃないかって不安になる🦐と
    🦐のすることで嫌いになることはほぼ有り得ない安定の🦈の話
    「はぁあ、」

    今夜もまたひとつ、溜め息が生まれてしまった。
    日頃からこまめな掃除をしているおかげで古いながらも埃臭さは抜けたオンボロ寮の中にある一室、わたしの一人部屋は他より多めに二酸化炭素が生まれていく。

    ……わたしの目下の悩み、それは二週間前に先輩後輩以上の仲になったフロイド先輩との関わり方だった。
    おっきくて神出鬼没。穏やかで移り気。鋭い観察眼は恐ろしいことにわたしの月のものの周期まで見抜いているらしい。人魚って誰でもそうなんだろうか。
    それはそれとしてフロイド先輩はわたしを連れて校内のどこへでも向かう。どこへでも。例えそこが校内でいちばん高い塔のてっぺんだったとしても。上空の気流が不安定な時でも、強風で彼の笑い声が掻き消されて、くっついたお腹が震えることで辛うじてわかることだってある。

    監督生は怖いもの知らず、みたいに言われているけどわたしだって一応オンナノコで、怖いと思ったりするんです。
    ただ、それをフロイド先輩に伝えた時に「つまんねー」って言われたらどうしようって、不安になるんです。

    三週間目に突入したある日、わたしはとうとうフロイド先輩の誘いをひとつ、断ってしまっ 2894

    まさん

    DONE🦐を庇ってモブ生徒の魔法を喰らった🦈が五感シャットダウンされた話………いま、先輩が、わたしを庇って倒れた。

    とある生徒が叫んだめちゃくちゃな呪文は恐ろしいことに解除の方法もわからない厄介な呪いを彼に振り掛けた。
    大きな身体が地面に倒れていくさまがスローモーションのようで、わたしは何も考えることなく隙間に自らを滑り込ませて先輩の頭だけはかろうじて守った。この時に捻った足首の痛みなんて、今は構っていられない。
    生徒は「俺は悪くねえ」と上擦った声で叫びながら走り去っていったけれど、その方向に柔らかく微笑むジェイド先輩が待ち構えていて、さらには彼の手刀で弾き飛ばされて壁にめり込んだ。

    「せんぱい、大丈夫ですか」

    先輩はぎゅうっと身体を縮めて、浅く早く呼吸を繰り返している。何かを探すようにもがく手を慌てて握って、あまりの握力で思わず目を瞑った。震える彼の、泣きそうな声にまた目を開ける。

    「小エビちゃん、どこにいんの?ここ、真っ暗で怖い、」

    「せんぱい、ここにいますよ。深呼吸してみてください」

    「ジェイド、アズール、どこにいんの?助けて、」

    ぎぢ、と骨が軋むくらいの握力は弛まず、わたしは件の生徒のこめかみを踏みにじるジェイド先輩を呼んだ。

    「フ 2717

    まさん

    DONE🦐に不思議な話をしてもらう🦈の話それはフロイドと監督生がモストロラウンジで使う食材のおつかいに、街へ行った時のこと。
    仕入数を間違えて足りなくなった果物を業務用スーパーで求めて、フロイドがリンゴ10個とオレンジ6個を、監督生がイチゴを1パックぶら下げててくてく帰路を歩いていた時のこと。

    「フルーツティーが思ったより好評でさあ。テーブルにキャンドルセット置いてティーポットの中でゆっくり煮出すんだけど、帰ったら小エビちゃんにもサービスしてあげんね」

    「楽しみです」

    「その前に喉渇いて干からびそお。あそこのカフェ入ろ」

    くるるる、とフロイドの喉が器用にも鳴った。それは彼女だけにしか聞かせない、甘ったれたい時のとっておき。頭二つ分低い位置にある右側を見下ろして、落ち着いた色味の大きな瞳をとろりと見つめる。

    「…………もうちょっと歩いたとこにある喫茶店にしませんか」

    フルーツティーという言葉に目を輝かせていた監督生が、珍しくフロイドの申し出を遮って提案をしてきた。その発言に彼はちょっとだけ目を見開いて、それからすぐにおっとりと笑んで「いーよ」と返す。ただの気まぐれ、あのカフェにさしたる執着もなかったから、ふたりはそ 2266

    まさん

    DONE卒業してから同居してる🦈🦐の話(………今日も遅くなるのかあ)

    わたしはとあるマンションの一室、板張りのリビングにあるソファにぼたりと身体を沈めた。ちっちゃい手には画面が点灯したままのスマホ、フロイド先輩とのメッセージのやりとりが表示されている。ここ最近の履歴を見たら「飲んでくるから先に寝てて」なんて内容ばかり。なんだか疲れちゃって、目を伏せた。それでも脳内で消えずにくるくると回るメッセージ。

    (『飲んでくるから先に寝てて』かあ……)

    いつものわたしだったらいそいそと寝る支度をして、さっさと布団に入って夢の底に落ちていったことだろう。
    けれど今日はちょっとだけ寂しい思いをしたの、こちらの世界でできた友人、エースとデュースがそれぞれいいひとを見つけて、来年の春に籍を入れるんだって。ふたりは順調に未来に向かっているのに自分だけ気まぐれな人魚、フロイド先輩のお世話になっているということが、今日だけは何だか無性に気になってしまう。
    だから、いつもの「わかりました」という返事ではなく、「早く帰ってきてください」って言った。だけどそれはいつまでも既読すらされないから、今度こそ諦めて目を閉じた。ベッドに行くのも億劫になっちゃ 7025