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    とばキチ46

    @tomodo_4646

    闇鍋生成者。ここが地雷原だ

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    とばキチ46

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    ちょっとしたお話を2つ。
    弊6と特務少尉殿の日常の一コマ。

    弊6と少尉殿の駄文【621】
    第四世代強化人間、性別不詳。
    元々喋る方ではあったが、VⅣラスティと交流してから口調やノリが移った。
    元医療従事者。

    【特務少尉】
    惑星封鎖機構、エクドロモイパイロット。
    燃料基地襲撃後、621と行動を共にしている。
    実直で割り切りがいいタイプ。


    【 邂逅 】

    燃料基地襲撃で撃破した惑星封鎖機構の特務機体、エクドロモイのコアをコツン、とパイルバンカーでつつけば、損傷した機体の隙間から人が見えた。少しだけ身じろいだような気がして、独立傭兵レイヴンことハンドラーウォルターの猟犬C4-621はエクドロモイのコアを抱えてハンガーに帰る。
    [621、よくやっ…、それは?]
    帰ってくるなり敵機のコアを開け、中から血塗れの人間を連れ帰って来た621をモニター越しに見たウォルターは困惑の声を上げる。
    『まだ息があったから拾ってきた。私は以前医療従事者だったから…治療したい。』
    […分かった。捕虜という扱いになるが…まぁお前の好きにしろ、621。]
    621は強化手術を受ける前、医療従事者であったという。しかも、外科的な処置を専門とした分野だったとか。ハンガーにはかなり本格的な処置室が併設されており、そこへ執行部隊の隊員を担ぎ込む。実力は拮抗しているかそれ以上だった為、手加減が出来ずコアを直接叩く形となってしまった。遠距離機体の方は即死だったようだが、近接機体の少尉と呼ばれていた男は息があった。目の上をざっくりと切っていて、コアを貫通した兵装で腹や胸を抉られている。傷を閉じて点滴を挿し、丁寧に治療をしていった。

    規則的な機械の音が聞こえてくる。目が覚めたとき初めに見たのは灰色の天井だった。
    任務は遂行出来なかった。 
    AC単機に負けたのだ。あの時、確かに死んだと思ったがどうやら死にぞこなったらしい。埃っぽくて、鉄と油の匂いがする。しかし自分が寝かされているベッドや手に巻かれた包帯は清潔なもので、丁寧に治療が施されていた。
    息はできる。手も動く。目は…、片方だけ見えない。そんな具合に少しずつ確認していく。意識は随分朦朧としていて、起きてから頭痛と吐き気がひどい。からっぽの胃を押さえてえづくと、同時に腹部に強い痛みが走る。どっと冷や汗が出て思わず身体をくの字に曲げれば、心拍と血圧を測る機械が警告音を鳴らした。
    その音を聞いてか、誰かが部屋にバタバタと入ってくる。
    『起きたか。深呼吸しろ、傷が痛んでも深く息を吸ってゆっくり吐け。』
    その通りに息をする。腹部の傷が痛んで顔を歪めると、背中をさすられた。しばらくして随分呼吸がマシになった頃、自身の体をさすっている人物に目を向ける。
    彼、もしくは彼女は包帯に隠された顔をこちらに向けると目元で微笑んで見せた。

    3日ほど経って、少尉がベッドの上で体を起こせるようになった頃、ようやく目の前にいる包帯まみれの人物と口を聞く気になったのか相槌を返すようになった。621は気道切開をしているため声が出せないが、首元の端子に機械音声の発音器をつけて会話をしている。
    『少尉殿、調子はどうだ?』
    「…まぁまぁだ。」
    『辛くないなら身体起こしててもいいけど、それなりの傷だからもうちょっと横になってたほうがいいぞ。』
    「寝てばかりだと…体が痛い。」
    『…ならせめて毛布の一枚でも羽織ってくれ。この星は冷える。身体に障るからな。』
    「……お前は、」
    『私はどうせ体温調節機能なんてとっくの昔に死んでいるし、感覚も鈍い。失敗例の第4世代だからな。あなたはちゃんとした強化人間だ。体は大事にするんだな。』
    「…、お前はレイヴンで合っているか?」
    『それは借りた名義だ。C4_621、これが私の名称だよ。』
    「………どうりで。」
    少尉はため息をついて、何かを諦めたように少し遠くを見つめるとそのままベッドに深く沈む。封鎖機構が追いかけていたブランチのレイヴンではないと分かり緊張が解けたのか、少しだけ張り詰めた空気が緩んだ。それと同時に辛そうに顔を歪める。
    『どこが辛い?』
    「腹の…、これどうなってるんだ?」
    『私のパイルバンカーでコアが破損した時の傷だな。すまなかった。内臓が傷になっているからかなり痛むだろう。』
    「…そうか。あの時の……」
    『少尉殿が強かったから加減が出来なかった。』
    「…一級士長はどうなった?」
    『即死だったよ。』
    「、………そうか。」
    少尉は短く相槌を打つと、それ以上は特に会話することはなかった。621は点滴の速度を少しだけ早めると部屋を出ていった。

    それからは少尉と621の間での会話が増え
    た。封鎖機構が追っているレイヴン本人ではないことが分かったことが大きいだろう。


    【 機体新調 】

    捕虜、という扱いにはなるが殆ど行動の制限をつけられていない惑星封鎖機構の隊員が来てからはや一ヵ月が経とうとしていた。
    621はいつものように任務をこなし、ハンガーに入ったACのコックピットを開けたまま、アセンブル調整端末と睨めっこをしている。あまりにも姿が見えないので様子を見に来た少尉が早く降りてこいと催促すると、愛機の機体を伝ってするすると慣れた動きで足場に滑り落ちる。
    「延長足場から降りろと言っているだろう。機体から落ちたらいくら強化人間だろうと死ぬぞ。」
    『大丈夫、大丈夫。ときに少尉殿、機体を新調する気はないか?あるな?よしやろう。』
    「話を聞け。せめて私の返事を待て。機体を新調する気はないし、そもそもACに乗る気なんて…」
    『封鎖機構のSE機体…あなたのエクドロモイには劣るかもしれないが、万が一の時を考えても足は持っておいた方が良い。』
    「…、もう少し危機感を持ってくれ。私は元は封鎖機構の人間だ、そのACがお前たちに楯突くかもしれないんだぞ?」
    『今更戻るつもりなんてないだろう?』
    621がさらりと言って退けると、少尉は眉間に皺を寄せながら押し黙る。その言葉には様々な意味が含まれているであろうことを察して頭を抱えた。その横でアセンブル端末を操作しながら、軽量二脚の脚部やスピード型のブースターなどを表示してみせた。
    『近接特化の軽量二脚機体なんてどうだろう?エクドロモイと似ていないか?』
    「機動面は近いだろうな。ただ…、相変わらず扱いにくそうな機体構成だ。」
    少尉が621が組んだアセンブルを見ながら眉を顰める。軽量二脚に、レーザーランス。確かに逆関節とエネルギーパイルを使っていた彼には馴染みやすいであろう構成だが、いかんせんACと SE機体ではそもそも性能が違う。加えて一ヶ月まともに操縦などしていないのだ。
    『体調面はまだ微妙だが体の支えも外れたし、手始めにログ回収でも付き合ってくれないか?戦闘になったらわたしが引き受けよう。』
    「待て、やるにしても先に仮想演習で慣らしてからにしてくれ。流石に挙動も分からないまま出撃はしたくない。」
    621は、その日は新しいアセンブルを試しがてら少尉の仮想演習に付き合った。結果は9-1で621の圧勝であったが、仮想演習といえ久しぶりに操縦席に座った少尉は少し楽しそうにしていた。
    『流石封鎖機構の特務少尉殿、病み上がりで一本取られるとは恐れ入る。』
    「お前…仮想演習だからいいものを、あんな挙動でG負荷大丈夫なのか?第4世代はG負荷耐性が高くないはずだ。」
    『前にも言ったと思うが、わたしは手術の欠陥で感覚が鈍い。それに、内臓も手足も、ほとんど自分のものではないからな。』
    ひらひらと、精巧に作られた義手を揺らす。少尉は険しい顔つきになると、ため息をついて621を諭した。
    「感覚がないからといって身体へのダメージがなくなるわけじゃない。普段は急上昇急降下を避けろ。」
    『ま、頭の隅にでも置いとくよ。』
    戦場で身体へのダメージ云々を考慮している暇なんてないだろうに、と出そうになった言葉を飲み込む。きっとこの惑星封鎖機構のエリート隊員は、そこまで考えて戦えるからエクドロモイを任せられていたのだろう。
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