君の体温を、共に。「……うん、袖丈もOK。ありがとう、神代くん」
「いいや、此方こそありがとう」
当たり障りのない笑みを浮かべながら礼を言う。
僕の服装の確認をしてくれた女子は、顔を赤らめて去っていってしまった。
変な勘違いをしていないといいけど。
そう思いながら、自身の服を見下ろす。
黒いタキシードのような装いに、丈が長いコート。
今の僕は、ヴァンパイアになっていた。
3年。高校最後の文化祭。
僕のクラスはお化け屋敷をやる運びとなった。
しかし、ただのお化け屋敷とは訳が違う。
教室ではなく、授業で別に使われる広めの教室を借りた、本格的なものだ。
ギミックだけじゃなく、様々な衣装やメイクで化物やお化けになった人が脅かす。
ゾンビや首なし人間などといった面々が襲いかかってくるのを回避しながら進んでいくお化け屋敷。
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