今は明星 ノーマンズランドの砂漠の夜は遅い。
生きる者全てを灼くような、日光降り注ぐ昼間とは打って変わり、煌々とした月と星の下、寒いほどの強風が砂を巻き上げる。
それでも突き刺さる太陽の光よりはマシだ、と、日が暮れてからしばらく、ランプと月明かりを頼りに、人々はしばしの間行動する。
ある者は夜行性の砂に棲む虫を捕らえ、非常食を作る。ある者は期限の悪いエンジンの診察をする。
ヴァッシュ・ザ・スタンピードは、ルーティンとなっている銃の手入れを停まったバス車内で終えた。慣れた作業とはいえ、壊れた義手と残された利き腕だけで銃を分解し、組み立て直すのは骨が折れる。凝り固まった肩を鳴らすついでに、首を伸ばして後ろの席を見ると、メリルとミリイがお互いの肩を貸し合って安らかな寝息を立てていた。バスを激しく揺らす悪路と容赦ない昼間の暑さは彼女達の体力を奪っていたらしく、すっかり深い眠りに落ちている。
3921