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    みやた

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    みやた

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    イベ終了ギリギリ間に合った…!
    お付き合い未満のケイイデです。

    #ケイイデ
    k-idea

    そういうところが好きなんだよね「イデアくんイデアくん、ちょっとピクニックに行かない?」
    「はい?」
     カタカタとパソコンを打つイデアに、そっと声をかける。
     イデアの部屋に来るのは、まだ数えるほど。
    けれど、こうして部屋に遊びに来られるようになったのだと思うと、ケイトは胸の奥がほんの少しだけ温かくなる。

    先程までメンテナンスをしていたオルトは、映画研究会の活動があると言って外出してしまった。
     夏も終わりに差し掛かり、多少暑さも残っていながらも日差しは和らいできている。
    時折、風が涼やかな香りを運んでくる。
    もうすぐ秋だ。

    「このクソ暑い中、ピクニック…?正気…?」
     顔を引き攣らせ、ものすごく嫌だという顔をしていた。
    そういえば、春頃に誘った時『ピクニックのなにが面白いのかさ〜っぱりでござる暑いのは嫌でござるお断りでござる』と言っていたのを思い出した。
    「そんなに暑いかなあ?結構涼しくなってきたような気がするけど」
    「健康優良児のケイト氏はそうかもしれませぬが、拙者ほどの不健康優良児ともなるとそうはいかないのです」
    「そっかあ」
     しょぼ…と残念そうな顔をすると、若干気まずさを覚えたのか、いやいや別にピクニックをディスったわけでもケイト氏のことディスったわけでもないんだから(正気は疑った)そんなに凹むことなくない?確かに断ったけど大体外出るだけでも暑いし疲れるし公園やら何やらで食事をしようものならジロジロ見られるしそれにサンドイッチに虫やら砂やら入ったらどうすんの?責任取れるのかってはなしなワケよ、と小声で長々と言い訳がましいことを言う。
    前まではぎりぎり聞こえなくてなんて言っているのかわからなかったが、彼と一緒に過ごすことが増えてからはだいぶ聞き取れるようになってきた。
    「じゃあもっと涼しい格好して出かけるのはどう?「袖が短いのとか、薄目のシャツとか」
    「カイワレ大根と名高い拙者の貧相な腕を見せつけられる方が可哀想」
    「じゃあさ、ピクニックはやめてイデアくんが涼しくて快適に過ごせるところに行くのは?」
    「…は?」
    「例えば、冷房の効いたカフェとか? 」
    「いやいやいや勘弁つかまつるでござる」
     イデアの指がピクリと止まり、椅子をくるりと回転させてケイトがいる方に体を向ける。
    ケイトはスマホをすいすい操作し、お目当てのページをイデアに見せた。
    「こことかマジカメで今バズってるカフェなんだけど、ちょうど期間限定のチョコパフェとかあるみたいなんだよね」
    「拙者がおしゃカフェでパフェなんて陽キャ中の陽キャが選ぶようなところ行けるとでもお思いか?いや無理無理」
    ただでさえカフェだなんて、と思っているのにマジカメでバズってる?
    自分が行くわけないということをわかっているはずなのに、寝言は寝てから言って欲しいとイデアは口をへの字に曲げた。
    「えーでも、すっごく美味しそうじゃない?」
    「…」
    「しかもほら、これ見て?クーポン出てるっぽくてさ。2人で行くと割引されるってやつ」
    珍しく食い下がるケイトに、イデアは少し違和感を覚える。
    そもそも、だ。
    「…ていうかそういう風に誘ってくるけどさ、ケイト氏甘いの苦手じゃん…」
    そう、そもそも甘いものが得意じゃなかったはずだ。
    だというのに、甘いものを食べに行こうと誘ってくるのは一体何故なのか。
    イデアとしては何でもない、ちょっとした疑問だ。
    しかしイデアがぽつりと言った瞬間、ケイトの胸の奥で小さな波紋が広がった。
     てっきり自分のことに興味ないだろうと思っていたが、ちゃんと知ってくれていたんだと。
     小さなことだが、思いがけず嬉しかった。
    「ん〜、まあね〜」
    わざと軽く流すように答えながら、ケイトはこっそり唇を綻ばせた。
    「なのにパフェ食べに行こうとか、どういうこと?っていう…」
    その問いに、ケイトは少しだけ声を落とす。
    「だって、イデアくんに構って欲しくて」
    「はい…?」
    「ピクニックもカフェも、正直どっちでもいいんだけどさ。ちょっとかまって欲しいな〜って」
     ぽつりと落ちた言葉に、イデアは目を瞬かせる。
     ケイトが何を言っているのか、理解が追いつかない。
    「か、構って欲しいって」
    「うん」
    「拙者に?」
    「うん」
    「え?」
    「ダメかなぁ」
     ケイトはにっこり笑って、イデアの手を取った。
     驚いたように目を丸くする彼の手を、そっと引き寄せる。
    「お願い、イデアくん」
    ケイトはイデアの手を取る。
     細く冷たいその指を、そっと自分のほうへ引き寄せる。
    「え…」
     ふわりと笑うその顔に、イデアは抵抗する間もなく、息を漏らした。
     ひんやりとした部屋の中、二つの影が寄り添った。
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