レンタル彼氏すぐるくん「――さすが夏油くん。今月の予約も上位じゃないか。卒業したら、本格的にうちで働かないかい?」
デスクで札を数えるのに夢中だとばかり思っていたこの店のオーナーは、天気の話と同じくらいの軽いテンションで誘いをかけてくる。
「冥冥さん、またその話ですか。さすがにこれを本職にする気はありませんよ」
「おや、大きな夢でもあるのかな?」
「……堅実なサラリーマン、ですかね」
「フフフ。実に似合わないね。私は君を以前から買っているのに」
「安定した収入は大事ですよ」
「さらに大きな金にかえられるならそれに越したことはないだろう?」
長く編まれた三つ編みの向こうで、ゆったりと目が細める。とにかく金が好きな彼女は、傑に大きな可能性を見出しているようだ。この誘いはすでに何度も受けており、その度に曖昧に笑って流している。
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