Pain「げ」
うわ、入った、と笠松は柄にもないそれに、げ、と短く言った。
ちなみに入ったのは、シュートなんかじゃない。
Pain
「入った」
「何が?」
いち早く反応したのは、たまたま横でシュート練習をしていた森山だった。ちなみに入ったのはシュートではないので、「何が」と聞いておいた。外したじゃん、と暗に言ったも同じだったから、笠松にぎろりと睨まれたのは言うまでもない。
「何が入ったんだ?」
ドリブルの練習をしていたらしい小堀が、ゴール下まで来ていて、聞こえていたらしく訊ねたら、笠松は、無言で右手を高く上げた。
「あ、うん、分かった、分かった」
「痛い」
「うん」
小堀が「分かった」と言ったら、笠松は眉を下げて、手を上げたまま、痛い、痛いと三回か四回言った。だいぶ痛いらしい。眉を下げてしまうと、元々の幼い顔が引き立ってしまって、海常の主将らしい力強さはなくなった。
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