いつものように水木の朝支度を見るでもなく、背を向けて幼い我が子と遊びながら時を過ごす。
幼い我が子と遊ぶゲゲ郎の後ろで寝巻きからシャツに袖を通してスーツへと着替える水木の気配を感じながら、幼子を我が腕の中に抱く瞬間が何故だかとても心が落ち着いた。
「ゲゲ郎」
そう声をかけられて振り向いた先には、既に着替えが終わった水木の姿がある。
その姿を見て思わず表情を綻ばせたところで、鬼太郎がじたじたと少しばかり暴れて水木の方へと手を伸ばすと、水木が膝を折って鬼太郎の手を取った。
むぎゅ、と強く指を握られる感覚に水木が笑い、その表情を見るでもなく今しがた自分が掴んだものが何か妙に物珍しいものだとでもいうように、じっと熱心に見つめてはまたぎゅうと握りしめて輪郭までしっかりとその目に焼き付けたがるように見つめている様にゲゲ郎が鬼太郎の背を撫でた。
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