彦が初めて浮いた時のお話(妄想)「将軍!僕浮いたよ!!」
足もとに冷たい風を纏わせ初めての浮遊を遂げた少年は満面の笑みをうかべている。
地面からつま先までたったの10cm程であるが、たしかに浮いている。こうして見ると、普段はかなり離れていた身長が縮まり、お互いの顔が見易く感じた。
「大したものだ、彦卿。」
そう言っていつも褒める時のように彦卿の頭を撫でようとしたが、彦卿が慌ててそれを制止する。
「わ!待って!!今飛ぶのに集中してるから!」
実際、こうして飛ぶのは簡単ではなく数十年程の修行が必要である。しかし景元が教えているというのもあるが、彦卿はここまで1ヶ月程しかかかっていない。教えるといっても飛ぶ感覚というものは中々口頭では伝わらず、結局は本人がその感覚を掴めるかどうかである。飛剣の扱いが得意な彦卿はその感覚を活用させて自身を浮かせていた。その柔軟な発想とそれを成し遂げる技量は彦卿の類いまれなる才能と言っても良いだろう。しかし、それにしても彦卿に頭を撫でるのを拒否されたのは悲しい。そんなことは知らない彦卿はもっと高く飛べるように全ての神経を集中させているようであった。
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