光の神と常夜の神 兄は……兄とその母上は酷く美しい者だった。
慈悲深く、美しく、そして誠実。
神威は矮小であれど、そんな彼女であったから主神である父は兄の母を愛した。
されど、嫉妬深い俺の母は彼女の存在を許さなかった。
兄の母は無惨に引き裂かれ、兄は国を守る為の戦神へと封じられたのだ。
物陰に隠れながらその一部始終を目にした俺は幼いながらに自らの母の醜悪さとそれに比例するように初めて目にした兄の美しさに魅入っていた。
宵闇色の髪、星すら呑み込んだ夜空のような澄んだ漆黒の瞳。
引き裂かれた母を前に、涙を流しながら俺の母に従う貴方を見て、幼心にも強く思ったのだ。
貴方を護りたい、と。
それから時が流れて他所の国の神々との戦が起きた。
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