大慶くんに誘拐される話 朝起きたときから、頭を針でちくちくつつかれているような痛みがあった。
起き上がれないほどの刺激ではなかった。けれどいざ一日をはじめてみると何をするにも体が重たくて面倒な気がした。
朝ご飯を食べる習慣はない。朝はてんでだめで、おにぎり一個だってお腹に入らない。
いつもなら朝ご飯の代わりにお茶やコーヒーを飲むのだが、今日に限ってはそのどちらも胃にずんと重く響きそうで口にできなかった。
脱水になっては仕方がないと思い、コップ半分の水をなんとか飲み干して身支度を始めた。
胸の奥がそわそわする。心は心臓にあるという人がいるが、本当にその通りだと思った。
着替えを済ませて昨日空にしたペットボトルを鞄から引っ張り出すと、それをシンクに投げ捨てて玄関に向かう。
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