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    a_yousou

    @a_yousou

    @a_yousou サイレント・ウィッチにどっぷり沼った。アイザック・ウォーカーとウィルディアヌ推し。
    師弟猫 色んな主従関係大好きです。

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    a_yousou

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    ゆうそう仕様のアイザックとエリオットは『部屋に放たれた蝉を10匹捕獲しないと出られない部屋』に入ってしまいました。
    80分以内に実行してください。




    いつぞやの出られない部屋に入っている事前提ですが、別に読んでなくても大丈夫です。

    彼はあの後、風呂に入り、そして服は廃棄しました。 閉ざされた部屋にアイザックとエリオットは何故か居た。今回は二人きりという状況でないだけマシ……と言うべきか否かは判断に迷うところであるとはお互いに思っていた。


     ——何故なら。


     部屋には無数の様々な虫が飛び交い、喧しく鳴き、そして木に張り付いているからだ。しかし部屋、そう前途の通り部屋には何故か木々が生え、緑が生い茂り、天を仰ぎみれば青空が見えた。
     ただ、空間には限りがあるのか、四隅とも一定の地点で見えない壁の様なものが存在している……だからきっとここは『部屋』なのだろう。


    (…………わぁ)
     エリオットは顔面蒼白になり俯いているが、アイザック自身も虫嫌いでなくてもこの光景は流石につらいし、少し気持ちが悪いとは思う。

     足元には虫捕り網がふたつに、虫篭……そこには数字がかかれた円盤が付けられていた。
     そして紙切れが一枚。アイザックは紙切れを拾い、くっついている虫を払ってからそこに書かかれている文字を読み上げた。
    「部屋に放たれた蝉を十匹捕獲しないと出られない」
     そう口にすると紙は端の方から光の粒子となり、アイザックの手の中から消え去る。
    「……そうか、じゃあ早く捕まえてくれ」
     エリオットは俯き、片手で顔を覆い、もう片方の手はアイザックの肩をポンと叩き、げんなりとした声で伝える。顔を手で覆い目をぎゅっと閉じているのは虫を視界に入れない為だろう。
    「全部、僕に任せて君は何もしないと?」
    「俺は! 虫が! 嫌いなんだ……」
    「うん、知ってる。木登りはしていたのに虫は苦手なんて笑えないね」
     次第に弱々しくなるエリオットの声にアイザックはさらりと言い返す。
     顔を覆っている手の指の間から、ギロリとアイザックを睨むが引き攣った顔では意味をなさない。……そもそもどんな反応を示そうが涼しげな顔で躱すのだから本当に無意味なのだけれども。
    「木登りと、これは関係ないだろ!」
    「虫が嫌いでレーンフィールドが治められるのかい? 森がすぐそばなのだから町の方にも——」
    「……言うな」
     小さな蜘蛛も苦手なのだ。蛾やその他の虫が部屋に入って来るなんて考えただけでおぞましいとエリオットは身震いをする。故に虫よけのハーブは欠かせないし、空気の入れ替えの為に仕方ないとはいえ窓を開けっぱなしにしておくのも本当は嫌なのだ。
     確かに二人で済ませた方が早く終わるのかもしれないが、その為には虫を視界に入れなければいけない苦行が待ち受けている。
    (……そうだ)
     顔から手を除けエリオットは目を細め、意地悪気にニヤリと笑みを浮かべた。
    「クソ従者、子リスが魔術奉納でどんな魔術を使ったか知りたくないか?」
    「」
     目を見開き、首を捻りエリオットの方を向きとても分かりやすく反応を示したアイザックだが、数秒の間を置き、首を横に振る。
    「……いいや、やめておくよ。そもそも君に彼女の、僕のお師匠様の使った魔術の素晴らしさを術式も含めて全て完璧に理解できているとは思えない」
    「…………」
     向けられる白い目と馬鹿にした様な言い様に(実際馬鹿にしているのだろう)エリオットはイラついたが、魔術に関して詳しいとは言い難いのは確かだ。ただ思うのは……。

    (……お前ってそういう奴だったか?)

     という点だ。『フェリクス』の……本物のフェリクス王子の従者をやっていた頃から知り合いではある。——知り合いであるだけで、友人ではない、それは今でも同じだ、そう絶対に友人などではない、とエリオットは思っている——が、あの頃や、成り代わった後のセレンディア学園に在学中にも見せたことが無いような表情をサザンドールでもしていた。それはきっと良い事なのだ。
     ——なんてことを絶対に口になんてするつもりはエリオットにはない。
    「……祝祭の記録なら詳細が分かる。流石に魔術式まではわからないだろうけどな」
    「そう、なら出来上がったらエリン領の屋敷と、王城の方に送っておいてくれ」
     既に交渉成立と言わんばかりにアイザックは虫捕り網を拾い、目は獲物である蝉を追いかけている。
    「……わかった」
     出来ればどこにいても確認できるように各拠点に……というのがアイザックの本音だがそれは拠点の位置をエリオットにも筒抜けになるという事だ。流石にそれは避けたい。
     そんな事を考えながらアイザックは虫捕り網を使い、蝉を一匹捕まえて虫篭の中に放り込む。そうすれば虫篭に付けられていた円盤の数字が減る。
    「成程、ここに入れたらカウントが減っていく仕組みなんだね」
    「なら、さっさと残りも捕まえてくれ」
     虫篭の中で喧しく鳴く蝉に顔を顰めエリオットは力なく口にする。
     同じ動作で何匹か捕まえて虫篭に放り込んでいく。木々に止まっているのを見定め捕獲するのはそこまで難しくはないが……。
    (正直、時間が掛かるな)
     いつぞやの時のようにこの空間と元の空間の時間差がどうなっているのか判らない以上長居はしたくない、できない。
    「……これって、生きたまま捕獲しないといけないのかな?」
    「……は?」
     ぼそっと呟いた言葉にエリオットが何を言ってるんだ、お前は? と思ったのも束の間。
    「ちょっと、これを持っていてくれないか」
    「お、おい!」
     アイザックはエリオットの返事を待たずに虫篭を押し付け、隠し持っていた投擲用のナイフを取り出し、飛んでいる蝉に向かって投げ——そして蝉に命中した。
    「⁉」
      蝉が刺さったナイフを器用に虫捕り網で受け止めたのち、網の中からナイフを取り出す。蝉は文字通り虫の息だった。
    「……うげぇ」
     目をぎゅっと閉じ、腕を伸ばし、できるだけ虫篭との距離をとるエリオットの事はお構いなしにナイフから抜き取った蝉を虫篭に入れると円盤のカウントは減った。
    「あ、これでもいいんだね」
    「…………」
     さらりと口にするアイザックに色々突っ込みたかったが禄でもない返事が返ってくるに違いないと、エリオットは口を噤んだ。何よりこの虫だらけの空間から早く出たいという思いの方が強かった。
     捕獲すれば生死は問わないと分かればアイザックの動きは変わった。的確に獲物(蝉)を見定め、ナイフを投げては蝉を仕留め、網でキャッチする——そんな動きを何度か繰り返し、必要な分の蝉を捕獲した。面倒になったのか虫篭に投擲のナイフごと蝉を放り込めばカウントは0になり、空間が溶ける様に消えていく。
     やっと出られるとエリオットはホッと安堵のため息をつく。そしてずっと気になっていた事がひとつ。アイザックの頭からつま先まで見たのちに首を傾げる。
    「従者……お前、何でその恰好?」
     アイザックが今、袖を通しているのはサザンドールで見た簡素な恰好でもなければ、領主としての執務をするにしては聊か華美な恰好。
    「……うん? ああ。今、王城に登城しているからね」
    「……は?」
     何故? と、その先を問うよりも先に、軽い眩暈と共に一瞬意識が途絶えた。




    *****




     眩暈から解放され辺りを見回せば、そこはほんの少し馴染み始めたレーンフィールドの執務室。
    「…………」
     何故、あんな空間に放り込まれたかなんて考えるだけ無駄だが、取り合えず……。
    「……祝祭の詳細、どれくらい出来上がっているか確認するか」
     とはいっても魔術奉納は昨日終わったばかりなのだ、そこまで進んではいないだろう。だが出来るだけ早めに仕上げ、かといって抜かりなく細部まで記されてなければいけない。でなければきっと、あの男は満足しないだろう、何よりも半端なものを提出などエリオット自身が許さない。次の魔術奉納の約束を交わした事を一緒に、自慢しても別に構わないだろう。そう、これも報告の一つだ……とエリオットは意地悪気な笑みを浮かべ——片腕に重みがある事に気付く。
     まさか……。と顔を引き攣らせ、恐る恐る重みのある方の腕を見るとそこには蝉が入った虫篭があり、エリオットは声にならない悲鳴を屋敷に響かせるのであった。




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    a_yousou

    CAN’T MAKE多分没ネタ
    戦闘シーンが浮かばない&ちょっと今んところ書けそうにもないので。書けているところまで

    お顔は戻ったけど右目は光がはいると変わらず激痛が走るまま。七賢人全員にアイクの正体がバレている(明かしている)という設定。なのは悶々とネタを練っていたのがまだ「世界の半分を失うis何!?」ってしてた頃だったからです。

    丁度魔法戦の抜け穴とかやってるし絶対に楽しい事になると思うんだよ
    ルイスvs アイクの魔法戦が見たい ——いずれあなたはその目に映る世界の半分を失うでしょう。
    〈星詠みの魔女〉から喪失の予言を受け、その回避の為にアイザックが一人で行動していた事をモニカ達が知ったのは、全てが終った後だった。どうして相談してくれなかったのかという思いもあるが、それ以上に悩みを抱えていた原因がそこにもあったのだと思うとやるせなさが胸を占める。
     それぞれ〈暴食のゾーイ〉に奪われた〈大事なもの〉は取り戻せたが、アイザックの右目は回復しないままだった。
     モニカが影を剥がしてくれたおかげで虹彩は戻ったが、依然として右目は見えづらく、そして光が入ると激痛が走るのは変わらないまま。黒い槍は直ぐに折られ、影の浸食が少しで済んだとはいえ、眼球に刺さった事には変わりはない為だろうというのが医師の診断の結果だった。
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