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    a_yousou

    @a_yousou

    @a_yousou サイレント・ウィッチにどっぷり沼った。アイザック・ウォーカーとウィルディアヌ推し。
    師弟猫 色んな主従関係大好きです。

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    a_yousou

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    ネロ様とウィルディアヌさんの会話。ウィルさんが命令に背いてサザンドールにやってきたのはウィルさん自身アイクと一緒で『今度こそ守るんだ』と言う気持ちが強くあったのだろうけど、焚きつけにネロも影響していたらいいなっていう妄想。

    表情豊かな無表情 その人物がエリン領の公爵邸に領主である第二王子フェリクス・アーク・リディルと共に姿を見せたのは春先の事だった。
     屋敷の使用人たちは「ご主人様がご友人を連れてこられた」と喜び、随分と張り切っている。王位継承権を放棄したとはいえ、第二王子である〈エリン公爵〉に用があり訪ねてくる者、接点を作る為、思惑があり夜会や茶会の誘いが来ることは多々ある。
     だが彼自身が招き、連れてきたのは初めてなのだから当然と言えば当然だろう。
     しかし一人だけ、人の姿をしたウィルディアヌだけはその〈ご友人〉の姿を目にした瞬間、元々無表情であるその顔を更に固まらせた。
     それもそうだろう。ウィルディアヌの主人でもあるフェリクス——否、アイザック・ウォーカーが連れてきた人物はバーソロミュー・アレクサンダーと名乗ったが、その正体はウォーガンの黒竜なのだから。
     ウィルディアヌがバーソロミュー氏と目が合った瞬間、彼の人物はニヤニヤと哂っていた。



    『滞在中は好きに使っておくれ」と一部屋、豪華な客室を貸し与えられた。
     広々とした湯船に浸かり身体を温め、用意された酒を飲んでいると扉をノックする音が響き、「失礼致します」の一言と共に開かれた。姿を見せたのはウィルディアヌだ。
    「……少々、お話をよろしいでしょうか」
    「あ? 構わねぇけどキラキラはどうした」
     キラキラ……聞こえるか聞こえないか程度の小声でウィルディアヌが呟く。
    「……マスターは仕事を片付けております」
    「ふーん。で、話ってなんだよ」
    「……マスターの顔色が優れないので、もしや夜会の場で何かあったのでは……と」
    「そんなの本人に訊けよ」
     そんな事かよ。と、ネロは呆れ交じりに言うが、その本人に尋ねても適当にはぐらかされてしまうから、こうしてネロのもとにやってきたのだ。
     アイザックの表の顔である第二王子周辺の情報収集を行っていたのはウィルディアヌであり、今回の件もウィルディアヌが真っ先に聞きつけたのだ。今回、アイザックが自領に戻ってきたのは領主として執務をする為だけではなく、粛清と、そしてもうひとつ——…それが今回の目的だった。
     そして、それを実行する為の協力者としてアイザックが連れてきたのがネロだった。ウィルディアヌは同行すら、させてもらえなかった。
     ぽつりぽつりと心情を吐き出せばネロは呆けた表情をするが次第に目は細められ、口角が上がる。
    「何だ? お前、もしかして拗ねてんのか?」
     揶揄い交じりにそう口にすればウィルディアヌは首を傾げる。
    「拗ね……る?」
    「ご主人様に放っておかれて、留守番ばかりさせられるから拗ねてるんじゃねーのか? わかるぜ、その気持ち。モニカもオレ様を放っておいて、出かける事が増えたからな」
     腕を組み、ウンウンと一人納得したようにネロは何度か頷くがウィルディアヌの表情は変わらず無表情のまま。ただネロから『拗ねている』と言われて何故か胸が騒めいたのは確かだ。


     拗ねている? 何に対して?
     ——エリン領で留守番をさせられていることに? 今回の件でも同行することが出来なかったことに対して?

     拗ねている? 誰が?
    (……わたくしが——?)

     目を伏せネロの言葉に、その感情に思案し始めたウィルディアヌを一瞥した後、ボリボリと頭をかく。
    「……『何かあった』ってんならあったぜ」
     ウィルディアヌから、テーブルに並ぶ酒瓶へと視線を移し、ネロは言葉を続ける。
    「キラキラの周りをウロチョロして監視していたのは帝国の人間だったんだよ。『くろじしこー』直属の部下だ」
    「……!」
     帝国の人間という言葉にウィルディアヌは伏せていた目をネロへと再び向ける。ネロはウィルディアヌを見ることなく酒瓶を一つ手に取り、栓を開封する。
    「で、その一人のぐにゃぐにゃ野郎が顔を作り替える技術? を作ったんだっけ? んで、『くろじしこー』とモニカが前に取引きしたことを知ったからキラキラは落ち込んでんだよ」
     わかったか? と言うが言葉を端折りすぎて意味が理解できない——と言うのがウィルディアヌの本音だ。だが、主人の——アイザックが表情を陰らせる程の事があったのは確かだということは理解できた。〈沈黙の魔女〉が絡んでいるのなら尚更だろう。
     ネロはネロで『あれ、これ言って良いんだっけ? ……でも口止めされたのはモニカに対してだけだからまぁ良いか』などと一人結論付けてグラスに注いだ酒を煽る。
    「で、トカゲ、お前はこの事を知ってどうしたいんだよ」
    「どう、とは?」
     ネロの問いにウィルディアヌは首を傾げる。
    「キラキラのご機嫌を知って、その後は? ぐにゃぐにゃ野郎をぶん殴りにいくか?」
    「いえ、それは……」
     今、どこにいるのかわからない相手にそれはできないだろう。戦闘は得意ではないが人間相手ならばどうにでもできよう。しかし、それ以前に他国の、ましてや黒獅子皇直属の部下ともなれば問題が多すぎる。ましてや命じられてもいない事をすることは主人であるアイザックの立場をより悪くするだけだ。
    「……マスターからそれを命じられたのならば始末することも厭いません」
    「命令されてない事は出来ないってことか」
    「はい」
     即答するウィルディアヌにネロは心底呆れたようにため息を吐き「つまんねーやつ」と悪態をつく。空になったグラスをテーブルに置き、ソファーの背もたれに身体を預け、興味が失せたとばかりにくわぁと欠伸を一つ。
    「じゃあご主人様の命令に従ってずっと留守番をしていればいいじゃねーか」
    「それ、は」
     ネロの言う通りではある。契約精霊である以上、主人の命令は絶対だ。留守を任され、仕事の仕分けを任されて、周辺の情報収集を定期的に行う……それを命じられているのだから従うのは当然の行為である。
     だがそれだけでは納得できないものがあるのだ。果たしてそれだけでを主人を守ることに、運命に抗う助けに繋がるのかと。
     またもや思考の海に沈みこむウィルディアヌをネロは鋭い眼光で見据える。
    「……」
    「今回の事だけを言ってんじゃねーよ。オレ様は例えモニカに『待て』って言われても、ご主人様に危機が迫っているなら、壊そうとするなら命令に背くぜ? でもってバリバリと頭から喰ってやる。お前はどうなんだ?」
    「…………」
    「お前、キラキラが処刑されそうになった時は身代わりになる覚悟だってあったんだろーがよ」
     それは、命令された事ではなく、ウィルディアヌの意思だった。
     ウィルディアヌは目を見開き、それ以上は何も言わずにいた。何か思案している様子だったが、ネロに深々と一礼をして部屋から立ち去った。
    (本当に面倒くせーやつらだな)
     ウィルディアヌが出て行った扉を眺めつつ、ネロは瓶のまま酒を煽る。
     上位精霊という存在は無表情で感情が読み取りにくいとされているがネロはそうと思っていない。
    (メイドのねーちゃんも、あのトカゲもすげーわかりやすいじゃねーか)
     面倒くさいと思いながらもネロの口角は上がり、笑みが浮かんでいた。
     ウィルディアヌが部屋を立ち去る前に見せた表情——その目には確かな決意が宿っていた。
    (まぁ、あのトカゲがどうするのかどうでもいいけどよぉ)
     もし何かしら行動に移し、そしてそこに居合わせたのなら——場合によっては助けてやるか。
     なんて柄でもない事を考えつつ、ネロは次なる酒瓶に手をするのだった。



      *****


     ネロが〈それ〉の魔力を察知したのは猫の姿のまま、街中を見回りしている最中だった。これが、別の者の魔力ならば特に気に留める事もなく、放置するが〈それ〉に関してはそうしなかった。〈それ〉自体と、会ったことや言葉を交わした事はほんの数回程度。
     だが、〈それ〉と関わりの深い人物はネロの主人であるモニカの弟子であり、ネロにとっては飯作りの上手いキラキラ……もとい、後輩だ。契約を交わしていないがモニカは大事な主人である。それ以外はどうだっていいが、それなりに気に入っている人物もいることは確かで、アイザックもその内の一人だ。別に美味い飯に絆されているだけではない。
     ……多分。
     魔力を辿っていけば港の近くに着く。辺りをきょろきょろと見回し——見つけたのは白いトカゲ……アイザック・ウォーカーの契約精霊であるウィルディアヌだった。
    「よー、。トカゲ。こんな所でおねんねしてると踏まれるぞ?」
     ネロは前足で何度か白いトカゲを突く。
    「その声は……ウォーガンの黒竜、様?」
    「おう、ネロ様だ。何だ、お前も海水浴をした感じか? しかも今はこの辺りの海は魔力汚染もすすんでんのによー」
    「わたくしは水の上位精霊です。海を渡るのも、水の浄化も得意でございます」
     確かに水の上位精霊は感知や戦闘能力は高くはないがそれ以外の所で秀でた部分をちゃんと持ち合わせている。
     黒猫の輪郭がぼやけ、青年の姿へと変化する。その場にしゃがみ込みネロはトカゲのしっぽを掴み、目の高さまで持ち上げる。プラプラと揺らされるのは初めて邂逅したとき以来か——とウィルディアヌがぼんやりつつ思案つつネロを見ればニヤニヤと哂っている。
    「ご主人様には留守番を任せられてたのに、こんな所にいていーのか?」
    「……貴方様が」
     衰弱しているのか随分と弱々しい声だ。それでも、意思の強さを感じる確りとした声だった。
    「あぁ?」
    「貴方様が、仰ったのではないですか『主人に危機が迫っているなら、壊そうとするなら命令に背く』と。わたくしはあのお方の、アイザック様の契約精霊です。主人の御身に危機が迫っているのを感じておきながら黙って待っているわけにはいきません」
     今度こそ守る——。アイザックがそう決意しながら行動していたように、それはウィルディアヌとて同じ想いでいた。今度こそ守る——、主人の力になるのは己なのだと。
    「へぇ、なかなか根性があるじゃねーか」
     揶揄っている様にも聞こえるが、紛れもなく本心からの言葉だ。
    「オレ様は気に入った相手には優しいから特別にお前をキラキラの所まで運んでやるよ。感謝しろ」
     ウィルディアヌの返事を待たず、ローブのポケットに白いトカゲを無造作に突っ込み、立ち上がる。こいつを見せたらあのキラキラは一体どういう反応をするのかなどと考えながらネロはその場から離れ、家路に向かって歩き出した。






    タイトル
    森の奥@創作お題
    @mori_odai


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    a_yousou

    CAN’T MAKE多分没ネタ
    戦闘シーンが浮かばない&ちょっと今んところ書けそうにもないので。書けているところまで

    お顔は戻ったけど右目は光がはいると変わらず激痛が走るまま。七賢人全員にアイクの正体がバレている(明かしている)という設定。なのは悶々とネタを練っていたのがまだ「世界の半分を失うis何!?」ってしてた頃だったからです。

    丁度魔法戦の抜け穴とかやってるし絶対に楽しい事になると思うんだよ
    ルイスvs アイクの魔法戦が見たい ——いずれあなたはその目に映る世界の半分を失うでしょう。
    〈星詠みの魔女〉から喪失の予言を受け、その回避の為にアイザックが一人で行動していた事をモニカ達が知ったのは、全てが終った後だった。どうして相談してくれなかったのかという思いもあるが、それ以上に悩みを抱えていた原因がそこにもあったのだと思うとやるせなさが胸を占める。
     それぞれ〈暴食のゾーイ〉に奪われた〈大事なもの〉は取り戻せたが、アイザックの右目は回復しないままだった。
     モニカが影を剥がしてくれたおかげで虹彩は戻ったが、依然として右目は見えづらく、そして光が入ると激痛が走るのは変わらないまま。黒い槍は直ぐに折られ、影の浸食が少しで済んだとはいえ、眼球に刺さった事には変わりはない為だろうというのが医師の診断の結果だった。
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