伝わるオフィーリア【伝わるオフィーリア】
「外は暑いな」
シャルル・ボードレールは隣に座る少女に話しかけた。
五月中旬、季節は春から夏に転がろうとしていた。ボードレールは長袖にズボンをはいていたが、長袖が熱さを倍にするのだ。
コーヒーカップのコーヒーを一口飲む。彼はカウンターテーブルでコーヒーとケーキをたしなんでいた。
ケーキはオペラ。チョコレートケーキだ。
『温度が上がってきている』
「また蝉が鳴き始めるのか。日本人はあれを夏の風物詩にしているが僕にとっては煩さしかない」
隣に座っているのは幼女だった。砂糖菓子をそのまま服にしたかのような白いレースに水色を基調とした服を着ている。
『不思議の国のアリス』をモチーフにしていると話していた。『不思議の国のアリス』はルイス・キャロルの著作だ。
9283