「マッチングアプリで結婚する人が増えてるんだってさ」
「へえ…」
「まあうまくいけばお見合いみたいなもんだもんな」
二人して肉が食べたいという話になって、ステーキを食べに来たら木吉がそんな話をし出した。
学生時代からの紆余曲折を経てなぜか恋仲のようなものを兼ねるようになってしまった俺たちには、あまり縁のない話だ。
「そういうごっこしようか」
「は?」
肉を頬張っているとよく分からないことを言い出す。
「肉好きですか?俺も好きです。祖父母と一緒に住んでるんであんまりがっつり食べることってないんですけど…。同じ時に同じものを食べたいと思うなんて、嬉しいです」
「……」
木吉は唐突に敬語で話しだした。何だ?見合いの体をとってるのか?突然始まった三文芝居に俺は肉を噛むスピードを落として黙った。
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