水木にはこんな怖い体験があってもおかしくないよねって話ちょっと話が長くなるが聞いてくれるか。
前に住んでいた家の目の前に広場があるんだが、昔隣家のばあちゃんが自殺した場所なんだ。鬼太郎が昔よく遊んだちょっとした遊具のある広場だよ。
俺も子どもの頃遊んでた場所だけど、親からあんまり近づくなって言われてた木があって、そこが現場でさ。
それを知ったのは成人してからで、その時にはその木はすでに伐採されてた。
じゃないと鬼太郎を遊ばせないさ。
でも俺は普通に木登りとかしてたし、害もなくて。
「あのばあちゃん、そうだったんだ…」としんみりしたくらいで、その話は流してた。
小さい時は遊んだりしたけど、隣家とそんなに仲良い訳でもないし。
ばあちゃんの兄さんは広場からちょっと離れた所に住んでたんだけど、たまに挨拶するくらい。
こないだ母さんに用があって行ったら母さん居なくて玄関に座って待ってたんだわ。
夏の夕方ちょっと前だから暗くないのに公園には誰もいない。もう少し涼しくなったら子どもの声が聞こえてくるかな〜今年は夏祭りやるのかな〜とかぼんやり玄関越しに眺めてると、楽しそうな声が聞こえてきたんだ。おっ、早速子ども出てきた!となんだか嬉しくてな。
声の感じから小さめの女の子の声がよく聞こえて「お兄ちゃん」って微かに聞き取れたから、多分もう1人は兄ちゃんなんだろう。
その広場は木が囲ってるので玄関の隙間から見てる俺にはそんなにハッキリと見ることが出来ないけど、遊具がある方ではなくボール遊びが出来る広い方にいるみたいだった。
仲良い兄妹なんだな〜ってほっこり聞いてたら、遊具側に人の気配が移動した。
1人は自転車で、その後を追いかけてくる感じの影。大きさ的に兄ちゃんが自転車に乗って、妹が追いかけてるみたいな。
でもスピードが出てるわけでなくて兄ちゃんもすぐに自転車から降りて妹とキャッキャしてた。
そうこうしたら、風が吹いて木々の隙間からその子たちが見えた。今度は妹をお兄ちゃんが追いかけるらしい。
手加減してるのか追いつかない。
可愛い〜!って、思わず悶えるくらい可愛いやりとりでいいもの見た〜!って感じだった。
でもな、女の子、モンペ履いてたんだ。
このご時世で。
最初全然気づかなくて、ただぼんやり良いな〜って思ったんだけど、モンペ?今どき?いや、そういう感じのズボン?いやいやいや、兄ちゃんの方も旧型の学生服!?は??自転車古くないか?それ壊れてない???って頭パニック。
すぐに家を飛び出して広場に駆け込んだよ。
視界いっぱいに広がった青空の下、広場には誰も居なかった。
人の気配は微塵もなかった。
どっから持ってきたのか、壊れた自転車だけが転がってて、車輪がからからとまわってた。サドルすら無かった。
その瞬間。本当に突然なんだけど、小さい頃一緒にスイカ食べさせてくれた隣家のばあちゃんを思い出してさ。
縁側で家庭菜園の畑を見ながら、小さめに切ったスイカをニコニコしながら食べさせてくれたばあちゃんだった。
それまで全く思い出さなかったのに、ばあちゃんの思い出がガツンと頭に入ってきた。
そんで、ふとこう思ったんだ。
ばあちゃん、幸せだった子どもの時を見せてくれたのかなって。
それで、ちょうど昨日。
ばあちゃんの兄ちゃんの葬式参列してきた。
何十年も経ってたけど、おいかけっこにやっと追いついたのかな、なんて。
そんな話。ひ