犬に嘘は通じないエイプリールフールネタ
シンキラ
「よし! 今日こそは!」
シンは朝から気合いを入れていた。何故なら今日こそは隊長であるキラの役に立ちたいのだ。
いつもいつも頼られたいと色々頑張っていたが、なかなかキラはシンを頼ってくれない。
ファウンデーションの件で頼る事を知ったはずなのに、油断をすると直ぐに1人で抱えてしまうのがキラだ。長期間1人で頑張る事を覚えてしまった結果、頼ろうとはするもののほぼ1人で解決するのは変わってなかった。あのアスランですら頭を抱えるほど、キラの自己犠牲精神は根深かった。
昨日もなんだかんで夜遅くまで機体の調整をしていたようだったが、ちゃんと睡眠を取ったのかも怪しい為、早目にシンはキラの執務室へ向かった。
「おはようございます! 隊長!」
元気よく執務室の扉を開けると、執務室のデスクで何枚もの書類整理をしていたキラがいた。
「⋯⋯」
シンに気が付いていないのか、キラは無言で書類と睨めっこしていたが、やっとシンに気が付いたようでじっとシンの顔を見る。
いつもなら少し笑って挨拶をしてくれるのに、今日のキラは違った。
「⋯⋯遅かったね。何してたの?」
思ったより不機嫌そうな声に、シンはビクッと身体が跳ねる。
何かキラを怒らせるような事をしただろうか。
昨日の自分の行動や言動を思い出そうと頭をフル回転させるも、思い当たるやらかしは無いはずだ。
冷や汗が背中に流れる。
「⋯⋯すみません、俺何かしましたか⋯⋯?」
恐る恐る聞くと、無言だったキラが深くため息を吐く。
今までキラにそういう態度を取られた記憶が無い為、怖くて仕方がない。
「⋯⋯気が付いてないの?」
硬いキラの声に不安感が襲ってくる。
恐らく今のシンは、犬で例えたら尻尾が垂れ下がり、犬耳もしょげてしまっているだろう程に落ち込んでいた。
本当に覚えがないのだ。あるとすれば新たしくシンの為に用意された新型デスティニーの調整の件かもしれない。
グルグルと色々考えていると、急にキラが吹き出した。
「ふふふ⋯⋯ご、ごめんね、シン。君が余りに落ち込んじゃうから、可愛くて」
いつものキラの笑顔にシンは何が起こったのか分からずぽかんとしていた。
「⋯⋯ほら、今日はエイプリールフールでしょ?昨日ルナマリアから提案されてね。シンに冷たい態度を僕が取ったらどんな反応するか見たいって」
「え? は? ルナ? て、え?」
慌てて周りを見ると、こっそり隠れていたルナマリアが舌を出して両手を合わせていた。
「でも、シンがここまでワンちゃんみたいにしょげちゃうとは思って無かったから、つい笑っちゃった」
シンって可愛いよね。なんてのんびり話すキラにシンは脱力した。だが、次の瞬間騙された事にムッとしてキラが座る方へ移動すると、不思議そうな顔をしたキラに近づくと、そのまま椅子にキラを押付けその口を自分のそれで塞いだ。
その様子を見ていたルナマリアはとうとうやったかと言わんばかりに目を見開き、キラは固まっていた。
「俺を騙そうとしたんですから、覚悟あるんですよね? キラさん。ずっと我慢してたのに、俺もう我慢しませんから」
「え? え? シン? ちょ、冗談だよね? エイプリールフール⋯⋯で」
「俺はエイプリールフールだろうがなんだろうがキラさんに嘘は付きませんよ。だから、今日の夜、覚悟してて下さいね?」
シンがそう言った瞬間キラの顔が青ざめた。
ルナマリアに助けを求める様に視線を送るも、ルナマリアはごめんなさいのポーズを取っていた。
今日のキラが仕事に全く集中出来なかったのは言うまでもないだろう。
夜は我慢しなくなったシンに襲われたらいいな。(書かない)