絆創膏絆創膏(シンキラ)
カタカタと早いタッチでキーボードを叩く音と、ぱらりと書類を捲る音が執務室に響き渡る。
今日は真面目に仕事をしているキラに、シンは聞こえないように息を吐く。
いつもこうならこんなに仕事残る事ないのに。
出来るのにやろうとしないのはキラの悪い所だ。
アスランもシンに何度も言ってきたが、初めはどうせこの人の妬みかなんかだろうと思っていたが、真面目にきっちり仕事をこなしていたのは初めだけで、すっかりこの環境に慣れてから力を抜くことを覚えてしまったのか、ギリギリまでやらない事が増えてきた。
1度集中するときっかりこなすだけに勿体ない。
何度もジュール隊長に怒られているキラを見て何度助けたか。
まぁでも今日は久しぶりに定時で上がれそうだ。
そんな事を考えていると、「痛っ」と小さい声が聞こえた。
「どうしたんです!?」
慌ててキラの机の前に行くと、キラの右手の人差し指の先が薄ら切れていた。
「あー、ごめんね。書類の紙で指を切っちゃったみたい」
あははと困った顔で笑うキラの手を取り、切った人差し指を自分の口にぱくりと含む。
「ちょっ!シン??」
切れた箇所を舐めると、ピリッと痛んだのかキラの目が僅かに歪んだ。
シンははっと我に返り慌てて口を離す。
「あ、す、すみません!ついクセで⋯!消毒しないとって思っちゃって!」
「あぁ、なるほどね。消毒かー。怪我すると無意識に舐めちゃうもんね」
でもいきなり指を食べられたからビックリしたよ。キラは笑っていた。
シンも自分の行動に驚いていた。
昔自分が幼い時に同じように母がやってくれた記憶があり、本当に無意識にやっていた。
「とりあえず、絆創膏を⋯」
自分の隊服に絆創膏なんて入れてたか分からないが、とにかくポケットを漁ると1枚の絆創膏を見つけれた。
可愛い猫のイラストが描かれたそれは、少し前にルナマリアがくれたものだ。
これをキラの指には巻くのかと一瞬躊躇われたが、手持ちはこれしないので諦めた。
キラもじっとシンの手で巻かれていく絆創膏を眺めている。
「とりあえずこれで」
「ありがとう、シン。それにしても可愛い絆創膏だね。僕が付けるとおかしくないかな?」
こてんと首を傾げるキラに、シンは首を横に振る。
「おかしいわけないでしょ!むしろ可愛い⋯!」
おもわず漏れた本音に、慌てて口を手で隠す。
「⋯そっか。ありがとう、シン」
ふわりとキラが微笑んたと思ったらちゅっとシンの頬にキスを落としてきた。
「ーーっ!?」
「消毒と絆創膏のお礼だよ」
そう言ってキラはまた仕事に戻った。
僅かにキラの頬も赤く染まり、耳元は分かるほど赤くなっている。
あぁ、もう!なんでこの人はこんなに可愛いんだよ!
上官のあまりの可愛さに悶絶するしか無かった。