性癖パネル① オーブで1人父の働くモルゲンレーテへ歩いて向かっていた。何度か母と父に連れられて見学に来たこともあり、顔馴染みの人達も数人いたが、何やらバタバタしていてみんな忙しそうだった。
「なんかやけに騒がしいな? 何かあったのか?」
モルゲンレーテには軍事機密のものも沢山あり、シンが入れるところは限られている。
いつもなら止められるのだが、今日は1人。興味本位で賑やかな倉庫へ近付く。
「うわっ、これ⋯⋯」
ちらっと倉庫内を見ると巨大なMSが見えた。
今まで見た事のないその姿は灰色だったが、とてもかっこよく見えた。
はぁーと見上げていると、背後からむんずと首根っこを掴まれる。
「何してる!? ここは立ち入り禁止だろう!」
首根っこを掴んでいる人物は初めて見る人だった。
「あ、すんません! ちょっと父さんに用事があって⋯」
「あぁ、お前シンか。久しぶりに顔見せたな。離してやんな、アスカの息子だ」
顔馴染みの整備しのおっちゃんが助け舟を出してくれた為なんとか小言だけで済んだ。
「んで、お前さんはここは立ち入り禁止だよな? ここは機密情報が沢山あるんだ。子供の来る所じゃない」
「ごめんって。ちょっと賑やかだったから気になったんだよ」
「ふーん。まぁいいさ。兎に角ここで見た事は誰にも言うなよ。俺も忙しいからまたな!」
馴染みのおっちゃんは豪快に笑って去っていった。確かにいつまでもここに居るのはダメだろうとシンは倉庫を後にする。
その後父のいる場所へ行き、用事を済ませ、自宅へ戻ろうとした矢先だった。
ギッと頭上で嫌な音が聞こえ、上を見た瞬間吊り下げられていた部材が落ちようとしていた。
「うわあああっ!!」
このままだと不味いと思ったが、咄嗟の事で動けない。
「危ない!!」
声が聞こえたと思ったら、ドンッと誰かに押されて倒れ込む。その後派手な音が辺りに響き渡り土煙が舞う。
「いってて⋯⋯一体なにが⋯⋯」
閉じていた目を開くと、シンが立っていた所に1人の少年が倒れていた。
「ちょ! だ、大丈夫ですか!?」
恐らくさっきシンを押してくれたのがこの人なのだろう。シンを庇って怪我をしたかもしれないと酷く焦る。
「⋯⋯うっ、あ、君⋯⋯大丈夫?」
身体を起こそうとしたその人は優しくシンに聞いてくる。歳はそんなに変わらないかもしれない。着ている作業着はモルゲンレーテの物だ。だが、シンと同じくらいの歳の子供が居るなんて知らない。
「えと、俺は大丈夫だけど⋯⋯」
「そっか⋯⋯良かった」
ふわりと笑った顔にドキリとした。優しい笑顔だけど、どこか悲しそうなそんな表情を見て、シンの胸がザワつくのを感じる。
倒れたその人が立とうとした時。
「いっ! 痛っ⋯⋯!」
顔を歪めまた倒れてしまいそうになるその人をシンが抱き留める。
足元を見ると避けきれなかったのか部材が当たった性で片足を負傷していた。出血し、とても痛そうだった。
「あ⋯⋯俺、誰かを⋯⋯」
「だ、いじょうぶ⋯⋯多分誰か来るから⋯⋯」
痛むのか冷や汗を流すその人は、泣くことも無くただじっと痛みに耐えている。
(早く誰か来てくれよ!)
シンが強く願っているとすぐに音を聞いた人間が集まってくる。その中で名前を呼ぶ声が聞こえた。
「キラッ!」
金髪のその彼女は確か、この国のお姫さまだったはずで。
「あ⋯⋯カガリ?」
痛みで朦朧としているのか、キラと呼ばれたその人はゆっくりと走り寄ってきたカガリを見つめる。
「怪我したのか!? 大変だ! えーと」
シンが気になるのか、カガリは何か言いたげにシンを見つめてきた。
「俺の事はいいから、この人の事お願いします! 俺は怪我はしてないから!」
「分かった。とりあえずキラは怪我の治療をしないと⋯⋯キサカ!」
背後から走ってきた褐色肌の軍人が近寄ってきて、怪我をしたキラを抱き抱える。
「すまないがまた後で話を聞くと思うから、あっちの方で待っていてくれるか?」
カガリはシンを気にしつつ、頷いたシンを見てからキラを連れてその場を去った。
シンの父親が騒ぎを聞き付けやってくると、事情聴取を受ける羽目になり、シンは分かることを話す。
シンを庇って怪我をしたキラの事が気になって、周りの大人に聞いてみるものの俺達じゃ分からないし話せないと言われた。なんだよそれと文句の1つでも言いたかったが、どうもそんな事を言える雰囲気ではなかった。
しばらくしてキラを連れて行った褐色肌の軍人、キサカさんがやってきてキラの事を教えてくれた。怪我は少し切っただけで、全治は3週間ほどだろうとの事だった。ホネとか折れてなくて良かったと安心したがそれ以来キラと会うことは出来なかった。
しばらくしてオーブが地球連合軍に攻められ、シンは家族を失った。
戦時中は色々あり過ぎてその時の事を忘れていた。
戦争が終わり、キラと再会したのはオーブの慰霊碑の前だった。その時は全く覚えておらず、ただフリーダムのパイロットとしての再会だった。
ふとキラがザフトへ出向していた時に、思わぬ事実を知ったのだ。
「⋯⋯なんか、シンとはあの時が初めて会ったと思えなかったんだよね⋯⋯」
「え?」
書類を書きながらふとキラからそう言われた。
思い出そうとしても、慰霊碑前で2回会ったことぐらいしかシンの記憶は無かった。
「昔、モルゲンレーテに居なかった?その時に僕、怪我したんだけど」
モルゲンレーテ。怪我。
そのワードから導き出した答え。
「えっ!? あの時の“キラ”ってキラさんの事なんですか!?」
「あ、やっぱりあの時の子はシンだったのか。僕も色々あって忘れてたんだけど、シンを見てたら思い出してね。あの時、君を助けれて良かった」
ふわりと笑ったキラに、シンは慌てる。
「え! あっ! あの時はちゃんと礼も言えなくて、そのっ!」
「いいよ。その代わり、これからもよろしくね、シン」
「はいっ!」
運命の出会いがあるとすれば、キラと出会えれたあの時がそうだろうとシンは思う。
性癖パネル、14×16のシンキラだったら、これしか思い浮かばなかった!でも確かシンの両親モルゲンレーテで仕事してるとどこかで聞いたな。よっしゃ、これしかない!という勢いで書きました。由良さん参加ありがとうございます😊