(シンキラ)
雨降る中、共に私服で傘を差して道を歩いていた。
「キラさん。俺、渡したい物があって⋯⋯」
キラの少し後ろを歩いていたシンが、突然そんな事を言ってきた。
振り返ると、ガサゴソとコートのポケットから何かを取り出していた。
片手で差し出されたそれは手のひらサイズの小包。
「⋯⋯開けてみてもいい?」
本当なら雨の降る道で開けるべきでは無いのだろうが、シンからの贈物という事もありすぐに見たくなった。
傘が邪魔で開けずらかったが、どうにか包みを剥がしケースを開けると、中に入っていたのは細身のシルバーのチェーン。
「これ⋯⋯」
「足につけるやつなんです。アンクレット。これなら付けてても邪魔にならないかと思って」
まさかのアクセサリーをシンから貰うとは思わなくて驚いた。
「⋯⋯ありがとう。ねぇ、シン。これ付けて貰っても良いかな? あ、でもここじゃあ無理だよね」
キラは少し思案した後、近くにあるホテルに気が付いた。
「シン、こっちに」
そう言って受け取ったケースを大切にポケットに入れ、傘を差したままシンの手を取る。
「ちょ、キラさん?」
慌てるシンに「いいから」と言ってホテルへ入る。差していた傘を畳み、フロントへ向かうとさっさとチェックインを済ませ、用意された部屋へ向かう。
「⋯⋯キラさん、なんか積極的ですね」
「⋯⋯積極的な僕は嫌い?」
「まさか⋯⋯じゃあキラさん足出して」
部屋に入るなりキラを椅子に座らせ、履いていた靴を脱がすと、キラのコートから先程のケースを取り出すと、中に入っていたアンクレットをキラの細い左足首に付ける。
「はい。付けれましたよ」
「ありがとう。シンからの贈り物、大切にするね」
チャリっと光るシルバーのそれをキラの指が触れる。細身のそれはキラによく似合っていて、シンは満足した。
「キラさん知ってました?左足に付けたアンクレットって恋人が居るって証になるんですよ。あとお守りの意味もあるんです」
「え? そんな意味があるんだね」
知らなかったと呟くと、シンが真剣な眼差しでキラを見つめる。
「⋯⋯俺、キラさんが好きです。俺にあなたを守らせて欲しいんです」
「⋯⋯ありがとう。でも、僕で本当にいいの?」
真っ直ぐなシンの告白に、キラは少し怖気付いた。
「何言ってんですか。キラさんだからいいんですよ。俺はキラさんが居ればそれでいい。他は要らないです」
「そっか⋯⋯なら約束して? 僕を置いて先に居なくならないで。僕も君を置いて先に居なくならないから。だって、君には僕しか居ないんでしょ?」
「約束しますよ。俺にはもう、キラさんしか居ないから」