甘いケーキはお好き? ミレニアム艦内の自室でシンは暇を持て余していた。
「あー! 暇だ!」
今日のシンは休息日で、エマージェンシー以外の仕事をしてはいけない日だ。この日が作られたのは主に隊長であるキラの為だったのだが、キラ自身が1人だけそんな休息日を取るのはと渋った為、ミレニアムの乗員全てに与えられた。1日だけだが、ミレニアムの乗員達には好評な休息日設立だった。
シンは決して仕事人間ではないが、艦内でやる事がなかった。読書も最近は気が乗らなくて机に置かれたままだ。
さて、どうしたものかと思案していると、ピピッと部屋のコール音が鳴った。
誰だ? ルナマリアは調整してる時間だ。
「シン。入っていいかな?」
聞こえて来た声に思わず飛び跳ねる。
「キ、キラさん!?」
慌ててロックを解除すると前に居たのは隊長のキラだ。確かキラもシンと同じく休息日だった筈だ。
「ごめんね?休息日なのに押しかけて。寝てたら行けないと思ったけど、どうしてもシンに渡したい物があって」
「いえ、丁度暇してて何しようかと思ってた所です。渡したい物? なんです?」
「えーとね、これなんだけど」
そう言って差し出された白い箱。
「なんです?」
「えーとね、シンって甘い物好きだったよね?」
「え? 好きですけど」
「うん。えーとね、ケーキなんだけど、お礼とお詫びで を兼ねてシンに食べて欲しくて」
キラがシンにお礼とお詫び? なんかあったか? なんて考えていた。
「えーと、この間シンの事殴っちゃった事、まだお詫びしてなかったから。それにいつも助けて貰ってるし。そのお礼だよ」
ファウンデーションのあの時かと思い至った。気が付けばあれからかなりの日数は経っていたが、キラはいつかちゃんとしたいと思っていたらしい。
「いや、あれは気にしないで下さいよ! それに、俺だって色々キラさんにお世話になってますし⋯⋯ケーキ、キラさんも一緒に食べません?」
「え? でも⋯⋯」
「1人で食べるより2人で食べた方が美味しいですから」
半強制的に備え付けのデスクの椅子にキラを座らせる。
キラが持って来てくれた箱を開けるとイチゴのショートケーキとチョコケーキが入っていた。
「キラさんどっちがいいですか?」
「シンが食べたい方でいいよ? というか、両方シンが食べてよ」
「じゃあ半分っこしましょう」
「え⋯⋯、別に気にしないでも」
「半分食べてくれないなら、あーんってしますからね」
「⋯⋯分かったよ。じゃあ半分っこね?」
シンの押しに負けたキラだったが、シンの優しさに笑みが零れる。
シンは、本音を言えばあーんをしたいし、あわよくばあーんをして貰いたいと思ったが、半分っこでも充分幸せを噛み締めたのだった。