忘れられたプリント忘れられたプリント
「はぁー、もう夏休みも今日だけかぁー」
キラの部屋でのんびり過ごしていると、キラが深く溜息を付いた。
「文句を言っても仕方が無いだろう? それよりも明日から学校だが、宿題とか準備とか出来てるのか?」
「もう! アスランてば母さんみたいなこと言うー! 今年の宿題はアスランとやったから大丈夫だよ! ドリルも終わったし、マイクロユニットの課題も終わってるし、読書感想文もやったよ。それにしても、読書感想文なんて何であるんだろうね」
ぶーとモンクを言うキラに、アスランはまた始まったとばかりに肩を竦める。
「読書して貰うのが目的なんだよ。キラみたいに本読むの苦手な子がいるから」
「うっ、だって本読んでると眠くなっちゃうんだもん」
「はいはい。でも今回は俺と一緒だったから問題なかっただろ?」
「うん。本当にアスランのお陰だよ!」
キラの夏休みの宿題の手伝いをすると初めから約束していた為、今年は最終日に宿題に追われることはない。
「あ、そういえば、プリントはちゃんとやったか?」
そういえば1個だけキラとやらなかった宿題があった事を思い出す。
「⋯⋯プリント?」
首を傾げたキラに嫌な予感がした。
「まさかやってないのか⋯⋯? 休み明けに小テストやるから、プリントをしっかりやれって先生から言われていただろう?」
しばらく無言が続いたと思ったら、さぁーとキラから血の気が引いたのが分かった。
「ちょっ! 待って!?」
慌てて学校のカバンを漁り出したキラに、あぁ、やはりこうなるのかと頭を抑える。
「⋯⋯あった⋯⋯」
キラの手に握られたプリントはシワになっていて、どうやら押し込まれていたのが分かる。
「⋯⋯キラ⋯⋯お前な⋯⋯」
どうしてこう雑なんだ。と怒ろうとしたが、それよりも前にキラが泣きそうに目をウルウルさせていた。
「あすらぁん! どうしよう!」
アスランは自分がキラのこの顔に弱い自覚があった。
「⋯⋯仕方がない。さっさとやるぞ」
「うん!」
アスランの言葉にパァっと明るく笑顔になったキラに、苦笑するしかなかった。
どうにかプリントも終わらせ、2人で他にないか最終チェックもしたし、明日の準備も終わらせた。
こうして最後までワチャワチャした長い夏休みは終わりを迎えた。
「⋯⋯来年もアスランお願いします」
「⋯⋯キラ、お前な⋯⋯はぁ⋯⋯仕方がないな」
キラに頼りにされるのは嫌では無い。むしろ頼って貰えて嬉しいと思う。
キラにはアスランが必要で、アスランにもキラが必要なのだ。
いつまでもこの関係で居たいと思う反面、キラへの気持ちをいつか伝えれたらとも思った。
キラは鈍感だから、アスランの気持ちには気が付いていない。キラが気が付いてくれればいいが、まだまだ子供っぽいキラには期待は出来ないだろう。
(まぁ、焦らなくていいか)
今は友達でいい。いつかはと期待しつつ、今日もアスランはキラの隣に立つのだった。