寝坊【寝坊】シンキラ(種自由前、ザフト白服時代)
「よっし!今日こそは!」
パンっと自分の頬を両手で叩き気合を入れる。
時刻は朝方、6時を示している。
事前に隊長であるキラに、時間になっても起きて来なかったら起こしに来て欲しいと言われていたのだ。
起こさないといけないタイムリミットは30分。
会議が始まるのが8時。
支度等の時間を考えるとギリギリだ。
ここ最近のキラは多忙を極めていて、睡眠をあまり取れていないようだったから、出来ればギリギリまで寝ては貰いたい。
だが、それをすると完全に時間オーバーになる。
キラを起こす大役を任されていたシンは5時には目覚めていた。
キラの自室へ行き、予め聞いていたロックの解除の番号を入れて中に入る。
ベッドではキラがすーすーと穏やかな寝息を立てて深く眠っているようだった。
疲労が溜まっているのだろう、目の下には薄らと隈が見えていて、やっぱりギリギリまで寝かせた方がいいのか?と思ってしまう。
しかし、今日の会議は大切な物だと聞いている。
新たな部隊を編成する為の協議だと。
その為にキラはここ最近連日莫大な量の仕事をしていたのだ。
シンは意を決して、眠っているキラの身体を揺する。
「キラさん、起きて下さい。起きて準備しないと」
「んんっ⋯」
唸るばかりで起きる様子のないキラに、シンは頭を抱える。
時々キラは寝起きが頗る悪い時がある。
そんな日はどれだけ頑張っても起きない。
大体限界まで疲れきっていて、身体が休息を欲している時にそうなる傾向があると、今までの経験から推察出来た。
つまり限界が来てしまったと言うことになる。
ここ最近の事を思い出せば無理もないけれど。
しかし、どうしたものか。こうなったキラを起こすのは至難の業だ。
無情にも時間は過ぎていく。
もう1回今度はシーツを剥いででも!と思った矢先。グイッとシンの手をキラが引いてきた。
「ちょ!うわっ!」
ぼすんとキラの寝るはベッドに倒れる。
起きたのかと思ったが、変わらずくぅくぅ眠っているキラ。
無意識にシンの手を引いたのか?
シンの手を抱き寄せて眠るキラの寝顔は破壊力が凄かった。
「ーーっ!」
動揺して振り解けない。振り解きたくない。
もっと言えば寝顔をずっと見ていたい。
そんな欲がシンの頭の中をグルグルと駆け巡る。
(はっ!ダメだ!これじゃあ前と同じだ!)
以前も同様にキラに起こしてと言われた事があった。
その時も今回と同様キラは限界でよく眠っていた。
何をしても起きなくて、シンもどうにか頑張ったが力尽きてしまった事がある。
その時は会議ではなく、通常の勤務の為ギリギリまで寝かせていいかと判断した。
が、今回は重要な会議だ。
遅刻したら不味い。
「キ、キラさん!起きて下さい!もう本当、ギリギリなんですから!」
時計を見ると既に6時半を超えていた。
「んんー、ぁ⋯しん?おはよぉー⋯」
ぼんやりと目を冷ましたキラは、起き抜けの甘い声でほにゃっと微笑んで言ってきた。
「ーーーッッ!」
(可愛すぎだろ!この人!!)
「んー⋯」
まだまだ眠り足りないのか起き出す気配は無い。
本格的にヤバい。これでまた寝てしまうと梃子でも起きなくなりそうだ。
「ちょ、キラさん!本当に起きてください!」
時計は7時を過ぎて居て、もう本当に猶予が無い。
起きて身支度を整えて、軽い朝食を取らせて、会議室へ移動。このままだと遅刻する!
最終手段で、キラの耳元で大きく言ったら、キラはようやく目が覚めたのかガバッと起き上がった。
「ーっ!」
「いてぇ!」
その際シンと頭をぶつけてしまい、痛みに頭を抱えるキラ。
シンもまさかの頭突きを喰らうとは思わず痛みに悶える。
「ご、ごめん!大丈夫!?」
「大丈夫ですよ。それよりももう本当に、時間が」
「えっ!あ、うそっ!」
慌ててキラも時計を確認すると、予定よりも大幅に寝坊してしまった事実に蒼白になる。
直ぐにベッドから慌てて降り、来ていた支給のシャツを脱ぎ、新しい物に着替える。
シンも軍服を渡したり、寝癖のついたキラの髪を整えたり慌ただしく身支度を整える。
「キラさん、食事!」
「えーと、食べてる暇無いから会議終わったら食べるよ!」
「ダメですよ!少しだけ食べて下さい!せめてこれ1切れでもいいんで!」
小さくカットされたサンドイッチをひとつ渡す。
もぐもぐとちゃんと食べた事を確認して、資料を持って2人で会議室へ向かう。
どうにか会議時間ギリギリで間に合ったが、終了後イザークによってキラもシンも雷を落とされたのは言うまでもない。
イザ「貴様らは早めに行動出来んのか!!」
キラ「ご、ごめんね、イザーク。僕が寝坊しちゃって」
シン「キラさんは悪くないですよ!俺がちゃんと起こせなかったから!」
イザ「隊長と呼ばんか!馬鹿者!!」
こんな会話があったと思う。