人は声から忘れる 窓から差し込む柔らかな陽射しで目を覚ます。ちらりと文字盤を見れば、時間は六時を回ったところだった。
新学期を迎えてから、早速課題制作に根をつめていた。今日は自分にとって久しぶりにゆっくりできる休日である。しかし、寝直すほどの眠気も疲れもない。起き上がり、朝の時間を楽しむことに決めた。
少し前まで朝は冷えたが、最近は一日中過ごしやすい気温になった。もう、すっかり春になったようだ。
――暁が地元に帰ってしまった頃は、まだ空には冬の名残があった。
暁が居ない生活も、もう一ヶ月は経っている。無性に寂しさを感じ、チャットを確認すると、丁度暁から連絡があった。
『最近、課題で電話できないって言ってたけど大丈夫か?』
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