世界の冷たい病室で
まぁ、いつかこんな日が来てもおかしくはなかった。覚悟していなかったと言えば嘘になる。していたつもりだった。
それでも胸の動悸は収まらない。足を動かしているからか? いや、思考から来るものだ。ドッドッドッ、と収まる気配すらない。
それほど自分が焦っている。平常心で居られない。
煩いほどの動悸と共に漸くたどり着いた部屋。勢いのまま開ける気にはならなくて、そーっと、音を立てないように開けた。
そこにあるのはベッドと簡易的な机と椅子。壁は白い。良くある病室の形。
中心にあるベッドには目当ての人間が居た。自分の動悸をここまで早めた男。
「――生きてんじゃん」
「死んでてほしかった?」
口角を上げて眉を下げ、平気で笑っているようにも、困っているようにも見える表情を見せてきた。
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