虎穴【虎穴(こけつ)】
コンコンッ
「シャガラ様、お呼びでしょうか。」
……。
コンコンッ
「シャガラ様。」
呼びかけても返事がない。
もう一度ドアをノックしようと手を挙げた時、
ぎぃいいい
3メートルはある、煌びやかな装飾が施された観音開きの扉が、大きな音を立てながらゆっくりと開く。
開いた扉の隙間から、溢れ出す煙とむせ返るほどの香り。
室内に蔓延する揺らめく香の煙を、薄明るい照明がぼんやりと照らす。
その部屋の最奥のベッドの上に人影が見える。
「……おいで、シャオ。」
そう言って彼は、手をこちらに差し出し、人差し指をクイッと曲げる。
シャラン…
彼の腕の装飾と簪が、部屋に金属音を響かせる。
「……さぁ、おいで。」
「……。」
心の臓が大きく脈打つ。
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