彼岸花シャオは、真っ赤に咲く花を眺める。
この屋敷には、至る所に植木鉢が置かれている。最初は、雑草のようなものをなぜ育てているのかと不思議に思っていた。けれど最近になって、その正体が彼岸花だと気づいた。
「綺麗やろ?」
オレの視線に気付いたシャガラは、書類から顔を上げて微笑む。そんな彼の机の上にもまた、手折られた彼岸花が花瓶に活けられている。
「はい。しかし、彼岸花は不吉な印象が強い花だと思うのですが……。」
「せやなぁ……『火事になる』とか、『死人が出る』とかやろ?」
「はい。」
そもそも『彼岸花』という名前が不吉だ。それに、この時期になると、何の予兆もなく景色を一瞬で赤で埋め尽くす。なんとも言い難い不気味さがある。シャガラは花瓶から、1本の彼岸花を抜き取る。
989