キバウル本編 1 ──重厚な石造りの壁に、敷き詰められた燕脂と濃紺の絨毯。所々に置かれている調度品はどれも古めかしく、その建造物が、長い歴史と伝統を持っていることを物言わずに表している。その名称はナックルスタジアム。
高い天井を、銀縁の眼鏡をかけた少女がじい、と。手を後ろに組んで眺めていた。それに気付いたナックルの番人──ドラゴンストームの二つ名を持つ青年、キバナは、おもむろに彼女の側に近寄り小声で囁いた。
「──早めの見学ってやつか?未来のチャレンジャー」
ジムチャレンジの最後のジムであるナックルには、試合がある日以外も、それなりの人出がある。その内訳は他地方から来た観光客であったり、キバナ自身のファンであったり、そして近い未来、ジムチャレンジに挑む子供たちが保護者に連れられて自分を試すであろう竜の巣を見定めにくるのである。
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