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    メネリァン

    ホムンクルスについて虫の鳴き声すら寝静まる夜中に、肌と肌がくっついて溶け合い、一つになるほど強くお互を求め合った、そのあと。

    「無駄撃ちされた精液を見ると、ホムンクルス研究に携わってた時代を思い出しますよ…勿体無い……」

    ベッドで仰向けになって体を休めていたリァンは己の腹に散ったどちらのものともわからない白濁を指でなぞりながら呟いた。
    リァンに覆い被さるようにして時折り首筋にキスをしながら息を整えていたメネラはがばっと顔を上げる。

    「なんだいその話、凄く聞きたいのだが」
    「な、なんでそんなに目を輝かせているんですか……普通にホムンクルスの研究でしたよ」

    メネラがここまで食いつくと思っていなかったリァンはその興味の引きの強さに戸惑い、居心地悪そうに唇を尖らせた。

    「ホムンクルスって詳しく知らないんだ。魔法使い狩り前に禁止された、ってことくらいしか。それをリァンさんが知ってるなんて!
    しかも当事者の一人だなんて嬉しいに決まってるよ!」
    「声が大きい」
    「ああ、ごめん……とにかく今まで聞いたことない話だからさ、興味津々なんだ」

    リァンは事後で疲れた体にきぃんと響くメネラのテンションの上がっている声に、眉間に皺を寄せる。
    ゆったりと上半身を起こし、ベッドから起き上がったついでにタイミングよくメネラから手渡された濡れタオルで汗や体液を拭い、かんたんに体を綺麗にした。
    さっきまで上に乗っかって重みと圧をかけてばかりいた大きな子供のような男が、自分が今必要としたものを声に出さずとも手渡してくれるような、紳士的な用意周到を併せ持っていることになんだか無性に苛立つものもあったが、口や態度には出さずに飲み込んだ。

    「まあ1000年も生きている上にホムンクルス研究に携わっていた魔法使いなどさらに極少数でしょうからね。知りたいのなら明日にでも……くぁ…じっくり教えて差し上げますよ……」
    「本当だね?絶対だよ。でも取り敢えず疲れただろう?寝ても良いんだよ」
    「…言われなくとも」

    噛み殺しきれなかったあくびを漏らし、大きく息を吐いたリァンは再びベッドにごろんと横向きで寝転がった。
    その背中に身体をくっつけるようにメネラもベッドへ横になる。
    運動といっても差し支えないような激しい性行為をしたあとで、常日頃からリァンより基礎体温の高いメネラにくっつかれると暑くてたまらないので、できれば遠慮したいのだが今にも鼻歌を歌いそうなほどご機嫌で体に手を回してピッタリとくっついて抱きしめてくるため、早々に諦めた。

    「長くなりますから…覚悟しておいて……」
    「わかったよ、だからゆっくり休んでね」

    目を閉じた途端にすぅ、と眠りについたリァンの額に、メネラは愛しむようにそっと触れるだけの口付けを落とした。

    「おやすみ」




    翌朝。
    三人揃っての朝食をとり終えたあと、まってましたと言わんばかりに洗い物を片付けたメネラが食後の紅茶を持ってリビングにやってくる。
    その表情は満面の笑みと言っても過言ではないニコニコの笑顔だった。

    「リァンさん、昨日の約束覚えてるかい?」
    「ええ、もちろん。だから今日の食後の紅茶はリビングで、と言いつけたのですよ」
    「よかった。ちなみになんでリビングなんだい?」
    「図書館に近いからですね」

    リァンはソファのそばのローテーブル脇に高く積まれた本や紙束の数々をぽんぽんと叩く。
    その二、三に分けて生まれた資料と思しきタワーはどれも軽くメネラの膝より上までそびえ立っていた。

    「運ぶのなら手伝ったのに」
    「魔法で引っ張り出してくるだけですから必要ありません」
    「そっか、ならよかったよ。ちょっと読んでみてもいいかい?」

    リァンが無言で左の手のひらを資料の方へひらりと傾けたのをOKと判断し、上の方に積まれた古くなってところどころ変色したり破れたりした時代を感じる紙束を手に取り、めくって読んでみる。
    ホムンクルスとは何か、どういう意図で作るのか、作り方について、その他諸々ホムンクルスについての情報がみっちりと見覚えのある字で書き連ねられていた。
    心なしか後半に行くにつれて文字と文章に怒りが滲み出ている気がする。
    著書と思しきサインは最早殴り書きより酷い悪筆だがWとLから始まっているため、確実にリァンが書いたものだろう。

    「……ホムンクルスの研究の最初の説明だね」
    「今から説明しますがね。雇われの身だったのでレポートを求められまして」
    「リァンさんって雇われて仕事してた時期があったのかい!?」
    「ありますよ。むしろ魔法使い狩り前は魔獣狩りなどで日銭を稼いでいましたから」
    「そ、想像がつくような、つかないような……」

    正確には、ホムンクルス研究で雇われて研究するのは性に合わないのを見にしみて感じ、それ以降は雇われるのは辞めたのだった。

    「そんなことより。話、聞くんでしょう?」
    「ああ、うん。お願いするよ」

    リァンはメネラの持ってきた紅茶を飲み、喉を潤してから「では」と口を開いた。

    「その前に、なぜ私がホムンクルス研究をしていたと思います?」

    いったいどんな話が聞けるのか、期待で自然と体が前のめりになっていたメネラは唐突に差し込まれた問題にガクリと脱力した。
    ニコ、と目を細めて笑っているリァンを見て、揶揄われていることだけは理解できた。

    「ハハ、焦らさないでおくれよ……理由かあ、魔獣を研究していたから、その延長線でとか?」
    「魔獣の延長線にホムンクルスがいるかはなんとも言えませんし不正解です」
    「くっ……」

    メネラは結構真剣に考えた上で具体的な理由が思い付かずなんとなくで答えてしまったが恋人のことなら正解してみせたかったので、即座に飛んできた不正解の言葉に微妙な悔しさを抱えてしまった。
    自分はまだまだリァンのことを理解するには程遠いのだな、これから聞く話でまた一歩前進できるんだと前向きに捉えることにした。
    当のリァン本人はまるで魔法学校の専門講師のようになめらかに話し始める。

    「当時、どこかの錬金術を得意とする魔法使いが人造人間の製造に成功したと噂が広がったのです。
    その人造人間の名称がホムンクルス。
    名称のほかに製造法そのものを指す場合もあります。
    それを聞きつけた富裕層がこぞって人造人間を求め、作れる魔法使いを世界各地でかき集めていたのです。それはもう破格でね。
    当時の私は魔獣狩りで生計を立てられてはいたものの、とんでもない額の報酬をもらって人造人間を作り出すなんて面白いことができるならそっちの方が良かったんです。
    私からすればたかが人間風情が烏滸がましいことに同じ人間を作ろう、飼おう、売ろうなどとすること自体が面白くてたまらなかったのですっ飛んで行きましたよ。
    もちろん一番金払いの良い人間の元で研究員として日々ホムンクルスの製造を模索していました」
    「一つ聞いていいかい?」

    森の中を流れる川のように途切れることなく続くリァンの話を遮るのは忍びなかったけれど、メネラは手を挙げて質問を挟んだ。

    「そのホムンクルスを作り出した魔法使いは製造方法は公開しなかった、ということで合ってる?」

    川といっても最早濁流の如く話し続けていたリァンはメネラに視線を移し、集めた資料を漁りながらも澱みなく返事を返す。

    「はい、当時は公開されていませんでした。
    そもそもホムンクルス自体があまりに生命倫理に反していますからもともと一般に公開するつもりはなく、最初はその魔法使いとその周りの数名しか知らなかったのでしょうね。
    とはいえ、人間は噂好きの愚か者ですから。
    裏切り者が富裕層に情報を売って、それが漏れに漏れて瞬く間にホムンクルスの噂が広まって行ったのでしょう」

    メネラはこっそりと、リァンも生命倫理に反する研究をしていた自覚はあるのだな、と思ったことを胸に仕舞い込んだ。
    それ以上に、人間の愚かしさを語るときのリァンの生き生きとした表情に目がいってしまう。
    歪んだ笑顔ではあるものの、元の顔の造形が良いのも合って冷笑でも様になる。むしろ冷笑だから似合うのかもしれない。
    こんな深い話をしてくれる間柄にならないと見れない表情なのだろうか。冷笑も良いが、花が綻ぶような柔らかい笑みも見てみたいなどと考えているうちに、リァンはやたら自分の顔が凝視されていることに気がつき、器用に片眉だけ上げて怪訝な顔をした。

    「聞いていますか?」
    「聞いてるよ!ただ、楽しそうに話してくれるなあっておもってただけ」
    「事実楽しかったので」
    「それはなにより。それで?」

    リァンは再び積み上げた本の山から紐で綴られた研究レポートを差し出し、また口を開く。
    先ほどメネラがちらりと見たものは業務日誌のようなもので、こちらが研究レポート本体だったようだ。
    リァンは「読む読まないはお好きに」と同じような冊子をポイポイと数冊放り投げる。
    あくまでも研究が好きなだけで、終わってしまったものへの興味は尽きてしまうため、もうどうでも良い物としてぞんざいに扱っていた。

    「ホムンクルスの製造研究の始まりは噂の検証から始まりました。情報を知っている人間や魔法使いが少ないため、製造法のデマも多くはありませんでしたがとりあえず情報を集めろ、耳に入ったものは全て試せと仰せつかりましたので。片っ端から試して、玉砕の繰り返しでしたね。あれはつまらなかった」
    「どうしてだい?」
    「噂の検証は良いのですが、途中で私が『こうするべきでは?』と思いついたことを提言してもそれは噂にない工程だから、とホムンクルス製造の可能性より噂の再現が主になっていったのですよ。集められた魔法使いはただただ人間が流す出鱈目の情報に踊らされているだけ。つまらないでしょう?」
    「それはつまらないね。研究が意味をなしていないじゃないか」
    「おっしゃる通りで」

    リァンは当時の馬鹿で愚かな魔法使いたちのことを思い出して先ほどの冷笑から打って変わって眉間に皺を寄せる。
    愚劣極まりないくせに謎にリーダーを気取っていた魔法使いに、そんなのは研究ではないと言ったとき「それっぽいことをやっときゃ大金が手に入るんだからお前は黙っておけ」と宣った後の死に様を思い出して、ようやく少しだけ気分が落ち着いた。
    本当に最期まで愚鈍でどうしようもない腰抜だった。

    「というわけで、私は雇い主に『噂を再現する班と、独自開発する班に分かれてはどうだろう』と直訴したんですよ。雇い主は快く好きにしてくれと承諾したので、やっと私のやりたいことができるようになったというわけです。
    独自開発に来たのは私を含めて2名、そのうち1名は数日足らずでこんなの不可能だと叫んで辞めましたがね」
    「リァンさん一人で独自開発してたってことかい?」
    「まあそうなります。元々チームプレイは嫌いだったのでちょうど良かったんです。そして独自開発するにあたり、まず人間の遺伝子が必要になるわけですよ」
    「ああ……」

    メネラは昨晩のリァンの発言を思い出していた。

    「ま、私が絞り出すしかないわけですよね」
    「でもそれだと、もしホムンクルスが完成したとしてもリァンさんそっくりになっちゃうんじゃない?」
    「そうですよ。私の血や精液にさまざまな素材を混ぜ、ひたすらにレポートを書きながら試しまくりました。ある日を境に人間の肉に近いものが生成できるようになったので、そこからはベースは変えずに細かく分量などを微調整して人型になるよう研究を続けました。
    ああ、一応普通の人間の血や人外の血や精液で試したりしましたが、やはり魔力が通っている遺伝子の方が反応が良かった覚えがあります。
    幸い研究費用はたくさんあったので当時も違法でしたが、魔法使いの死体の花弁を素材として使ってみたりもしました。とはいえ所詮は死体でしたね。詳細はレポートを読めば馬鹿でも阿呆でもわかります」

    レポートにはリァンの言う通り、肉塊が形成され、手足や目、内臓のようなものが生成され、素材や方法を変えるごとにどんどんと人に近づいていく様が事細かに記載されていた。
    手の生える位置がおかしくても、指に爪がついていただとか、目、鼻、口のパーツが揃っただとか、皮膚があった、数本髪の毛が生えたなど。

    「これ、失敗したホムンクルスの残骸はどうしていたんだい?処理、としか書いていないけど」
    「雇い主はそれなりのサイズのミンサーを用意して、これで挽肉にして森にでも捨ててこいと言っていましたが、私は闇市に『ホムンクルスの肉は若返りの効果がある』と嘘を吹き込んで高値で売り捌いていましたね」
    「え、このかなり人間になってきた頃のものも?」
    「ええ。解体するのは面倒ですが、魔獣で似たようなことをしていましたから。パーツが人間に近ければ近いほど売れやすいんです」

    メネラは脳内でリァンに似た人間の成り損ないを想像し、あまりの悍ましさに早急に脳内から消した。これはメネラがリァン自身ではないから感じる生理的嫌悪なのかもしれないが、たとえ偽物でも自分にそっくりな人型をつくるだけでも相当であるのに、それを処理と称して解体、売買までしていたとは。
    リァンはやはり人とは違う感性の持ち主であることを再認識し、だからこそ今の彼があるのだと惚れ直した。今でもたまに闇市で真偽はさておきホムンクルスの素材が売っているのはもしかしたらリァンが開拓した商売のルートだったりするのかもしれない。
    本人はとうに興味を失っているようだが。

    「へえ、面白いな。でもこのレポート途中で終わってるよね?」
    「そうですね、辞めたので」
    「辞めたのかい!?」
    「だって……無力な人間のくせに私が日々少しずつ研究を進めているのをやれ遅いだとか、やれ金の無駄使いはやめろだとか、しまいには好き勝手な行動をするなときたものですから。じゃあこんな職場辞めてやりますよと言ったら、今度は手のひらを返していくらでも給料を出すから辞めないでくれなんて懇願する始末。
    金を積まれても思うように実験できないのでは意味がないので、その人間のライバルだった人間のホムンクルス製造研究所に移ったんです。
    その時にそのレポートを読ませて、実績を認識させてちゃんと最初から『実験は一人でやる、口出しをするな』と言いつけて契約書を書かせたので、私は大金をもらいながら楽しく研究に明け暮れ、無事に私がそっくりのホムンクルスは出来上がり、量産体制に入る前に製造禁止にされたわけですね!」
    「量産までは漕ぎ着けなかったのか!残念だね」
    「はは、闇市でホムンクルスの肉を売ってたあたりから今でいう魔法省のような輩に目をつけられていたらしくてですね。禁止令が敷かれてしまいました。
    その後、魔法使い狩りが起き、気分転換に人間をなぶり殺しにしてストレス発散しようとするもやりすぎて幽閉される羽目になったわけですね」
    「あれストレス発散だったのかい」
    「そうですよ。ただでさえ他人が嫌いなのに研究のためとはいえ人間に従っていたら、ついぞ禁止令で研究所が潰れてもう全て嫌になってしまって。私は静かに研究していたかっただけなのに……」

    しょんぼりと肩を落として話をしているが、語っている内容はとんでもないものであり、魔法省に数百年幽閉される規模の虐殺をたかだかストレス発散をやりすぎたせいと言ってしまう常軌を逸した思考と精神力、行動力、リァンの全てがメネラはたまらなく好きだった。
    こんなに面白いことをたくさん経験している魔法使いはリァン以外に絶対にいないと思えるほどに。

    「ちなみに、最後に成功した時って何の素材を使ったんだい?」
    「それはこちらに。魔法使いの血をベースに、満月の日の夜露に扶桑樹と月桂樹の皮を漬けて柔らかくしてすりつぶした液体に、ヤドリミソウの花とイド=クイの実を混ぜ、最後に返らずの花の花弁を5枚入れて、人間の体温と同じくらいの36度前後を保ちながら1年ほど待てば完成です。人として必要な知識は大体持った、ちゃんとしたホムンクルスが出来上がります!
    残念ながら法に触れるため、今この場で再現して差し上げることができないのが非常に残念ですよ」

    ホムンクルスの作り方は安全に頭に入っているのだろう。リァンは再び資料の本を差し出しながらホムンクルスのレシピを読み上げていった。
    ソファにふんぞり帰って、不平不満を漏らしながら冷めてしまった紅茶を飲み干す。

    「そうだね、できることならこの目で見てみたかったよ」
    「バレなきゃ出来ますよ、バレなきゃ。今では即刻バレるんですけど」
    「リァンさんには捕まってほしくないから諦めるよ。面白い話を聞かせてくれてありがとう!すごく楽しかったし、勉強になったよ。リァンさんのことも結構知れたし」
    「そうですか?お気に召したなら何よりですが」
    「お礼にならないかもしれないけど、紅茶を淹れ直すよ。お茶菓子に何か食べるかい?」
    「いえ、もうそろそろ昼ですから。昼食の準備でもしてくれたらそれで構いません。それで気が済まないのであれば思いつき次第提案します」

    リァンの発言でもうそんな時間か、と窓の外を見る。この家には時計がないから大体の時間で生活している。
    そんなに長いこと話していたなんて思えないほどあっという間だった。

    「あ、リァンさん。この本の山だけど半分くらい触ってすらなくないかい?」
    「ああ…何かしらの役に立つかと思って持ってきたんですが、思ったより鮮明に覚えていたので必要ありませんでしたね。では昼食前にそれを図書館に戻してきてください。それを礼として受け取ります」
    「わかったよ」

    メネラはさっそく本の山を一抱えだけ持ち、それ以外は魔法で浮かせてリァンの邸宅内にある図書館に向かう。
    図書館に入れば本は勝手に本棚に戻ってくれるのでこれでもまだお礼として足りないくらいだ。

    今まで人間、人外、魔法使い全人種問わずさまざまな人の人生を聞いてきたけれど、やはりリァンの人生が一番面白い。
    ホムンクルス製造研究に携わっていた魔法使いと言うだけでレアなのに、闇市や違法取引の話など、アンダーグラウンドな話はなかなか簡単に聞けるものではない。
    たとえ知っている魔法使いがいても大半は話したがらないだろうし、よしんば話してくれたとしてもこんなに詳しく話してくれない。
    一連の話を聞いて一番納得したのはリァンは雇われる身に向いていないという一点だったが、それは今後リァンが勤めに出ることがないという証拠なのでメネラにとっては嬉しい情報だった。
    上機嫌で廊下を渡り、リビングにティーセットをとりに戻ると、日の差し込む窓際のソファでリァンは横になって眠っていた。
    昨日は無理をさせたし、朝から長話をさせてしまったので疲れてしまったのかもしれない。
    メネラは昼食を作る前に自室に戻り、ブランケットを持ってきてすぅすぅと穏やかな寝息を立てているリァンを覆うようにふわりとかけた。

    「おやすみ、お昼ができたら起こしに来るよ」

    他者の気配に敏感なリァンがこうしてブランケットをかけても起きないようになったのを見て、また少し嬉しくなる。
    知れば知るほど面白い人で、一緒にいればいるほど好きになる一方で、自分のリァンはの興味はきっと一生尽きることがないのだろう。
    願わくば、自分が生きている間に一緒に面白い体験ができればなお嬉しい。
    などと想像を膨らませながら、昼食のために二階キッチンへ向かった。

    「何作ったら喜んでくれるかなあ」

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