酔っ払いのハグ狗丸に告白した。
彼はひどく狼狽えて、笑ってしまうくらい真っ赤になって、涙目でこう言った。
「か、考えさせて下さい……」
そんなわけで、めでたくお預けを食らうことになった。
それからも会うたびに話しかけては様子を窺いつつ返事を待っていたのだが、なかなか決定的な言葉はもらえない。照れてくれてるのかなとか、喜んでくれてるのかなとか、そういうのは時々伝わってくるんだけどな。
悩んでいるということは、何かネックになることがあるということだ。それをしっかりと解消してもらわないと、俺としても安心して付き合えない。
だから待つことにした。いくらでも待とうと決めた。
決めたのだが。
「やおとめ〜〜〜えへへへへ」
現在、酔い度MAXの想い人に抱きつかれて俺は固まっている。
仕事終わりに狗丸から連絡があり、なんとその内容が「よかったらウチで飲まないか」というものだった。いよいよ返事がもらえるのだと悟り、家に呼ばれるということは期待して良いのでは?と少しだけ浮かれ、もちろん了承した。
で、いざ家に上がらせてもらうと、狗丸は用意した酒をとにかくハイペースで飲み続けた。どうにか合間につまみを食わせたものの、彼の腹の中身はほぼ酒だろう。こんなの酔うに決まっている。
さすがにおかしいと思い、何事か問いただそうと彼に向き直ったその時だった。
「隙あり〜〜〜!」
そのままガバッと腹に腕を回されてハグされた、という経緯だ。
「隙あり」を「好き」と勘違いして一瞬心臓が跳ねたのは内緒だ。
「狗丸、飲み過ぎだ」
「な〜〜んで〜〜?全然飲んでな〜〜い!」
「ほら、水飲めるか?」
「飲ませて〜〜」
狗丸は抱きついたまま顔を上げてニコニコしている。これは何を言ってもダメだと早々に諦めた。
「やおとめ〜」
「なんだよ」
「俺やおとめのこと好きだよ〜」
ハッとして改めて狗丸を見ると、俺の胸元に額をグリグリ押し付けて「う〜」と唸っている。酔っ払いの気の迷いか。
「……そうか。ありがとな」
「あ、つたわってない!ほんとに好きなんだからな」
「嬉しいよ。俺も好きだ」
抱きしめ返すと、狗丸は一瞬身体を強張らせる。
「………狗丸?」
「……………」
「お前、意識ちゃんとしてるだろ」
「………ごめん」
顔が赤いのは、酔っているからか、それとも。
「酒飲まねぇとちゃんと言えなくて、ごめんな」
先ほどまでの能天気さはどこへやら。しおらしく俯いて、抱き付く腕の力が弱まる。
離すまいと抱き寄せると、腕の中で「うおっ」と驚いた声がした。
「酔っ払いの戯言でも、隠したい想いでも、嘘でも本心でも、何でもいいよ。ありがとな、俺も好きだよ」
「……………シラフの時にもっかいちゃんと言う」
「はいはい。楽しみにしてる」
「……気持ち悪い」
「だろうな。ほら、もう休もうぜ」
「ん」
体調悪そうに目を閉じる狗丸を見て、この人を大切にしようと、そう心に誓った。