「これから先も、」 鬼殺隊解散後、それぞれの屋敷で暮らしていたある日のこと。不死川が冨岡を訪ねてきた。
珍しい客だ、と冨岡は思いつつ、快く不死川を屋敷の中へと招いた。
何かあったのだろうか視線を流せば、彼は冨岡の心情を察したのだろう。訪ねてきた理由を話し始める。どうやら片腕となってしまった冨岡の身を案じ、足を運んでくれたらしい。本当に、やさしい男だと思う。
「不便もあるが、問題ない」
「……そうかィ」
冨岡の言葉を素直に受け取った不死川が、それ以上のことを追求することはなかった。ずいぶんと穏やかになったものだ。いいや、もしかしたら今の不死川が、本来彼のあるべき姿なのかもしれない。けれどもこれは冨岡の憶測だ。本当のところは不死川にしか分からない。
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